世にまかり通る保険の常識の数々。しかし、それを信じると思わぬ落とし穴に入り込むことに……。そんな実は「非常識」なことを保険のプロたちがつまびらかにする。
告知義務
保険の世界では、病気を隠して保険に加入しても、「2年間バレなければ、セーフになる」といった都市伝説的な噂が飛び交っている。果たして、それは本当なのだろうか? FPの畠中雅子さんは次のような見解を示す。
「保険会社は、契約してから2年以内の請求については、ほぼ全件を調査しますが、その期間を過ぎると審査基準が緩和されます。昔の保険営業マンの中には、『2年間黙っていれば、大丈夫だから』といった誘い文句で、強引に契約を取る人もいたようです。それで、そうした噂が流れているんでしょうね。とはいえ、自分が病気だと知っていながら、保険会社には黙って契約したわけですから、詐欺に当たる可能性が高い。2年隠し通せば、無罪放免ということは決してありません」
畠中さんによると、保険の契約内容が間違っていても、“うっかりミス”であれば、2年で時効になるそうだ。しかし、“故意”なら時効は適用されない。不正請求だとわかった時点で、保険金を全額返還させられるという。
平野FP事務所代表でFPの平野敦之さんは、「病気を隠していたことが発覚すれば、加入から2年以上経過していようと、告知義務違反によって、加入時に遡って保険契約を解除されます(払い込んだ保険料は返してもらえない)。保険契約には、詐欺・不法取得を目的とした場合は無効という条項もあります」と指摘する。
診療情報のデータベース化が進んでいるため、不正請求も見つけやすくなった。契約者に自覚症状があれば、病院に行ったりしているはずなので、保険会社は医療機関を調べる。病院を転々として、うまく逃れる人もたまにいるようだが、同じ医療機関を受診していれば、過去の病歴はすべて捕捉される。つまり、契約時に病気がわかっていたのか、すぐに判明してしまう。
こうして見てくると、どうやら噂を信じて悪心を起こしても無駄のようである。慢性C型肝炎の病歴を告知せずに保険に加入し、肝がんで死亡したとしても、慢性C型肝炎が原因と見なされるので、保険金は下りない。保険の契約時には、くれぐれも正確な告知を心がけよう。(図参照)