政府の狙いは「限定正社員」化か?
厚生労働省は今年1月、今後5年間の非正規雇用労働者の正社員転換や待遇改善のための様々な取り組みを「正社員転換・待遇改善実現プラン」として決定しました。
不本意ながら非正規雇用に留まっている労働者の割合を、2014年平均の18.1%から10%以下にまで引き下げることを、大きな目標の1つとしています。そのための切り札と位置付けられているのが「多様な正社員」の推進です。多様な正社員とは、職務、勤務地、労働時間を限定した「限定正社員」のことです。
「正社員として働きたいけど、勤務地や勤務時間などは制限してもらいたい」といった労働者側のニーズと、「これまでの正社員より低い待遇で雇用できるなら、比較的採用しやすい」という企業側のニーズを満たすしくみといえるでしょう。
(独)労働政策研究・研修機構が、今年5月に発表した「改正労働契約法とその特例への対応状況及び 多様な正社員の活用状況に関する調査」によると、約20%の企業が「多様な正社員(限定正社員)区分を、今後新たに導入(増員)する予定がある」と回答しています。
政府としては、無期契約社員ではなく、できれば限定正社員化を推し進めたい。そのため、有期社員を正社員化した会社に対しては、対象者1人につき数十万円の助成金を支給しているくらいです。冒頭で挙げたユニクロやスターバックスは、まさに政府方針にも沿った対応といえるでしょう。
しかし、先ほど述べたように、多くの企業は限定正社員ではなく、無期契約社員を選択すると思われます。「何とか人手不足は解消したいけど、かといって人件費の上昇は極力抑えたい」というのが、多くの企業経営者、人事担当者の本音だからです。
この問題以外にも、短時間労働者に対する社会保険加入対象者の拡大、最低賃金の引き上げ、同一労働・同一賃金実現に向けて予測される法改正など、企業の人件費が上昇していく要因には事欠きません。その一方で、ここ数年堅調であった上場企業の収益にも陰りが見えてきました。
私から企業へのアドバイスとしては「目先の人手不足解消や政府方針だけでなく、将来の収益や人員見通しに基づく慎重な対応をしてください」。有期社員の方々に対しては「希望者にとっては、正社員転換できる大チャンスです。転職することも含めて、この機を逃さないように」といったところでしょうか。