物心両面で満足してもらえる会社に

――現在、御社の社員は何人ですか。

被災地・亘理町にある露地圃場

【針生】舞台ファーム単体で50人。グループ全体で200人ぐらいです。かつては舞台ファーム1社で全て対応していましたが、これだけ様々な取り組みを行なっていくと、社員の管理システムが複雑になってしまいます。事業へのガバナンスをしっかりと取って行くことを目的として、旧舞台ファームの強みを切り出して会社をいくつか設立してグループ化しました。震災復興の折であったこともあり、新規農業会社設立による固定資産税などの援助策の恩恵も受けることができました。

――そういう柔軟性、適応力がやはり経営上の一番の強みでしょうね。

【針生】組織図を見ていただくと、うちにはMO(マーケティング・アンド・オペレーション)本部があります。経営者である私の直轄部門です。とかく営業は、お客さんにいい顔をしたがる。たとえば、カット野菜は20種類程度が一番効率いいのに「40種類やりましょう」とか。そうすると現実にカット工場を動かしている人から「何を言っているんだ」と反発が起きる。ですから、われわれは工場で経験を積んだ人間が営業に行って、常にマーケティングとオペレーションの議論がかみ合うようにしています。農場、流通、生産、各部門の責任者が集まって方向性を出すのがMO本部なんです。通称、プレゼン会議と言っています。

――なるほど。では、逆に組織的な課題、クリアすべきポイントは何でしょうか。

【針生】しっかりした組織をつくるには当然、人材が問われますけど、その前にもっとも大切なのは、社長の器を超えて会社が伸びることは絶対ないということ。社長の上に最高経営執行者(CEO)がいて、社長とCEOは別と意識したほうがいい。3.11以前は社長が経営執行すればいいと僕も思っていたんですけど、東日本大震災でコメの在庫が津波で流されるなど債務超過になり、皆さんに大きな力で支援していただいて考えが変わった。農業会社の長は社長ですけど、どんぶり勘定で数字が読めず改善する力がなければ、倒産する。CEOは、そこで全体を見てカバーするんです。

――針生さんはCEO的な立場で。

【針生】そうです。意識してやっております。

――人材、後継者の育成は、待ったなしですよね。

【針生】グリーンカラー育成システムというのがあります。コンビニでは地域特性やら、マーケティングデータを駆使してオーナーを教育するでしょ。あれと同じように、舞台ファーム20年の経験を、一挙に若手に注入します。農業は新陳代謝が大切。ただ、新しい人材を育てるには条件があるんです。休みと給料、ワークライフバランスです。僕は良く頑張ってくれた社員に、物心両面で満足してもらえる会社にしたいと思っています。