電子書籍の収益は変動相場になる!?

Kindle Unlimitedにより増収が見込めるとはいっても、大手出版社の事業規模からすると、当面、象にハエが留まった程度の影響でしかないかもしれない。ただ、これをきっかけとして電子書籍のさらなる普及が進めば、その状況にも変化が訪れるのではないだろうか。

ただし、来年以降のロイヤリティーの分配方法によっては、楽観はできない。前述のように今年の12月までは、10パーセントのページが読まれた電子書籍については、Kindle本が売れたのと同じように購読数単位でロイヤリティーが支払われる契約がなされているようだが、Amazonサイドがこの契約をそのまま続行するとは思えないからだ。

たとえば、音楽の定額制聴き放題サービスであるApple Musicの場合、総収入からプラットフォームの手数料を引いた金額を全再生回数で割り、それぞれの楽曲の再生回数(20秒の再生で1カウント)に従って権利者に案分する方式が採用されている。この方法が最も合理的で、すべてのステイクホルダーが納得する分配方式であろう。他の、音楽サービスも概ね似たような分配ルールだ。

しかしこの方法だと、全ユーザーの総再生回数に応じて、1再生あたりの単価が変動する。実際に、弊社が提供する楽曲の場合も、再生単価は約0.5~1.4円の間と、実に3倍近い振幅で変動しており、たとえ再生数が変わらなくても、毎月の収益に凹凸ができてしまうのは避けられない。コンテンツ企業の経営者としては、外的要因に左右され数字が読めない状況に大いなる戸惑いを覚えることは確かだ。

実は、Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)経由で登録するKindle Unlimited本には、「読まれたページ数」をカウントすることでロイヤリティを分配する、音楽と似たような方式が取り入れられている。Kindle Unlimitedが先行して始まった米国では、ページ単価約0.004ドル(約0.43円)程度で分配されており、この数字は、音楽同様ユーザーの利用率等で変動する。

将来的にこの分配方式がすべてのKindle Unlimited本に対して適用されることになれば、出版社の電子書籍の収益も随時変動することになる。海外のKDPユーザーの中には、Kindle Unlimitedの毎月のページあたりの分配単価をブログで報告している人がいるのだが、10%程度の変動は普通に生じているようだ。

Kindle Unlimitedという新しいサービスは、出版社に対し、変動相場のような“数字が読めない”ビジネスをもたらす可能性があるということは知っておくべきだろう。