Kindle本とKindle Unlimitedの間でカニバリズムは起きるのか

筆者は、定額制ストリーミングサービスが始まった当初、ダウンロード販売と定額制サービスの間にカニバリズムが起き、ダウンロード数が激減することを心配していたのだが、実際には前述の通りの傾向だった。Amazonのサービスに当てはめればダウンロード販売が単体販売のKindle本、ストリーミングが読み放題のKindle Unlimitedにあたるわけで、両者の間にも同様の現象が起きるのではないかと予測している。

つまり、従来からのKindle本の収益に、Kindle Unlimitedからの収益が上乗せされることで増収が見込めると睨んでいるのだ。そして、Kindle Unlimitedへのタイトル提供が多ければ多いほど、その増収分が多くなるのではないだろうか。

もちろん、音楽と電子書籍を同一視できるのか、という疑問はあるだろう。数分で聴き終わり、同一コンテンツに対し1人のユーザーが何度もアクセスする可能性のある音楽に対し、電子書籍の場合は、コンテンツを消費し終わるまでの時間も長く、消費の回数が稼げない点も異なる。

また、DRMが外れ、購入したファイルを「所有」したと感じられるダウンロード型の音楽コンテンツと比較すると、従来のKindle版の電子書籍はユーザーに「使用権」が付与されているだけで「購入」「所有」という感覚は薄い。

音楽の場合は、定額制ストリーミングが始まった後も、所有感を求めて“ダウンロードで買い直す”ユーザーが一定数存在するので、カニバリズム状態にならないのかもしれない。一方で、所有感に乏しいKindle本の場合は、どのみち電子書籍を「所有」できないのであれば、「Kindle UnlimitedがあればKindle本は不要」と乗り換える人が増え、カニバリズムが起きるとすれば、音楽の定額制聴き放題とは違うシナリオもありうるからだ。

Kindle Unlimited