田原さんの司会はなぜ面白いのか

会議ではホワイトボードを使うのも有効です。左上に「○○を決める」と議題を書いておく。これは会議を「N対N」ではなく、「N対1」にするうえでも効果を発揮します。まとまらない会議では、個人が個人に対して発言する「N対N」型に陥っていることが多い。そうなると信号の壊れた交差点のように、荒れたり、停滞したりします。しかしホワイトボードに全員が集中すると、参加者(N)とホワイトボードの内容(1)という形で、交通整理ができます。

また自分の存在を誇示するために関係のない主張をする人や、煙に巻くような発言で場を荒らす人に対しても、ホワイトボードは役に立ちます。発言を文字に起こして「見える化」すると、中身がないことが全員にバレてしまうからです。

当社のコンサルタント向けの研修プログラムでは、会議の研修は上級に位置づけられています。「ものごとを整理できる」「わかりやすく話せる」「人の話を聞ける」といった能力があってはじめて、質の高い会議ができるようになります。

参加者全員を議論に集中させるには、最終的なゴールだけでなく、その瞬間に話すべき一つひとつの論点も共有する必要があります。そのために「ものごとを整理できる」といった能力が求められるからです。

たとえば「会議の改善策を決める」というゴールを決めて、「どれぐらいの頻度で開催するべきか」という論点について話し合っているときに、「会議を欠席したら罰金というのはどう?」という異なる論点が出てきてしまえば、結論にはいつまでもたどりつけません。しかし実際の会議では、こうして論点がズレてしまいがちです。

その点、「名司会者」は、論点を明確にするのが上手い。討論番組『朝まで生テレビ!』の司会者・田原総一朗さんは、よく出演者に「賛成なのか、反対なのか、どっちなの?」と迫ります。そして相手が「賛成だ」と答えれば、「全然わからない。あなたが賛成する理由は何ですか?」と論点を明確にしながら、議論を深めていきます。田原さんの手法は、実際の会議ではすこし強引すぎて問題がありますが、「論点外しのプロ」ともいえる政治家に対しては有益なやり方でしょう。