「『ブランド』になりたい、という強い思いですね。そのために本物感を大切にしよう、と。本物感がないと、そのうちワゴンセールに乗ってしまって終わり、という危機感があった。お土産だけの世界ではなく、日本全国の食卓へ、この田舎から発信したいと考えたわけです」
確かに、セゾンファクトリーには「山形県」という果物の一大産地が持つ「本物感」がありながら、「山形県のお土産」というイメージは全くない。
「そのために、商品ではなく、セゾンファクトリーを売ろう、と社員にはいつも話しています。この商品はおいしい、ではなくて、セゾンファクトリーだからいいもののはずだ、と言われるように」
「エルメスに来て、エルメスは何屋さんですかと聞く人はいない。セゾンファクトリーはセゾンファクトリーです。ジャム屋さんだと言った途端に、ジャム屋同士の価格競争となります。モノを売るのではなくて、セゾンファクトリーを売れるような会社ではないと、“地方”から自立できないんです」
しかし、自社のブランドを売れるようになるまでの道のりは、決して平坦ではなかったはずだ。きっかけは何だったのかと聞いてみた。
「フーデックスです。大々的に出展したことがきっかけで、百貨店に入ることができたんです」
フーデックスとは、世界でも屈指の食品展示会だ。日本中からバイヤーが訪れ、多くの食品メーカーが自社製品を紹介する場である。驚いたことに、セゾンファクトリーはこのフーデックスに「商品」ではなく「店を丸ごと」展示したという。