ようやく動き出したゼネコン票

そこまで彼らが増長するのは、増田氏に勝利の可能性が見えてきたからだ。変化が起き始めたのは選挙戦中盤に差し掛かった20日過ぎのこと。いよいよ自民党からゼネコンに“指令”が出たのだと、関係者は述べる。

「2020年オリンピック・パラリンピックを控えて、ゼネコン各社はいつでも集票に動ける準備をしていた。ところが参院選挙が終わったばかりで、自民党からはなかなか指示が降りてこなかった。当初、増田氏の情勢が思わしくなかったのは、このような組織が動かなかったことが原因だ」

実際にこの日の会場にも、公益社団法人東京都医師会の尾崎治夫会長や一般財団法人東京私立中学高等学校協会の近藤彰郎会長など自民党の支援団体の代表が列席していた。中でも近藤会長は挨拶で、「組織のルールを守らない人に都政は任せられない」と小池氏を名指ししないまでも激しく批判している。

さらなる“秘策”も練られている。安倍晋三首相が増田候補と一緒に街宣車に乗って応援演説するという案だ。2014年の都知事選ではその終盤で、安倍首相が舛添要一候補(当時)と一緒に銀座で街宣車に乗った前例もあり、今回もその可能性は小さくない。

もっとも茂木選対委員長はこれを否定しているが、記者たちは「小池陣営をいたずらに警戒させないために否定してみせているだけ」と信じてはいない。実際に増田選対は、安倍首相が街宣車に乗ることをも含めて数パターンを検討しているという。

「我々は土曜日の段階で増田候補が小池候補に及ばない場合、逆転可能な場合、優勢な場合などに分け、それぞれどうするかを検討している。なかなか判断が難しい場合は、“スペシャルゲスト”ということで名前を伏せ、当日の情勢を見て安倍首相に登場してもらうか、それとも別人を立てるか決定することになる」

増田陣営にとって“リーサルウェポン”が安倍首相なら、鳥越陣営にとってのそれは宇都宮健児氏だったのかもしれない。

2012年の都知事選で96万8960票、2014年の都知事選では98万2594票も獲得した宇都宮氏は、告示日直前に鳥越氏に野党統一候補の地位をかっさらわれ、泣く泣く出馬を断念した。“宇都宮票”の多くは小池氏に移動すると見られているが、もし鳥越氏が宇都宮氏と手を組むことができるなら、これらを取り戻すことも不可能ではない。

そして7月27日、鳥越選対は宇都宮氏の「希望のまち東京をつくる会」に公式に応援を要請し、宇都宮氏側は協議を経て政策面で条件を付けて回答。しかし「女性の人権にかかわる問題についての対応」という点では合意できず、両者が共闘するのは困難な状況だ。

もし鳥越氏が宇都宮氏と共闘できるのなら、小池氏は鳥越氏から流出する宇都宮票を失うことになり、増田氏を利する可能性は大きかったかもしれない。また鳥越氏を擁立した民進党執行部の責任も、免れえたかもしれない。

鳥越氏は、「住んでよし 働いてよし 学んでよし 環境によし」に続き、「女性によし」をスローガンに加え、女性スキャンダルに対抗する戦術を採用。同時に小池氏を「核武装を容認する政治家」として批判すること で、必死に抵抗している。

都知事選の結果が判明するのは7月31日の深夜か8月1日の未明だが、それまでさらなる二転三転があっても不思議ではない。

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