13年にカネボウ化粧品で消費者の白斑問題が発生したとき、私はすぐに別棟にいるカネボウのメンバーを集めて、自分の想いをぶつけました。
花王グループはこの問題を全部受け止めて支援する。今は花王だ、カネボウだなどと言っている場合ではない。一緒になったことを今さらどうこう言っても始まらない。これから、グループとしてどうするのかが問われている。世界中の女性のために自分たちに何ができるのか。グループの力を結集して前向きに考えていこうと言って、カネボウでも現場ラウンドテーブルミーティングを実施しました。
最前線のビューティーカウンセラーをはじめ、支社・工場・研究所を回って、意見交換を進めました。考え方が違うこともある。でも、それはそれでかまわない。何度も繰り返し意見を戦わせることで、お互いの理解のレベルが格段に深まりました。
新しい気づきを与えてくれる「真面目な雑談」
花王にはもともと「真面目な雑談」を推奨する文化があって、どんな些細なことでも話題にできます。大上段に振りかぶって大きなテーマからいこうとすると、たいてい言葉に詰まってしまう。ちょっとした思いつきや身近な話題から入ったほうが、議論は盛り上がります。100のうち1つでも気づきがあれば、その雑談は成功です。一番よくないのは何も言わないこと。言わなければわからない。これは職場も家庭も同じです。
部下の立場では、思ったことが言える雰囲気というのは大事です。花王では「自分のこういう技術を使ってこんなことをやりたい」と言えば、上司も先輩も必ず聞いてくれます。私自身の経験のなかでも、「最後の責任は俺がとるから、心配せずに力一杯やってみろ」という上司の言葉に何度救われたか。まだ私が部下20人ほどのマネジャーだったとき、当時の副社長を呼び出して「やらせてほしい」と直訴したことがあります。もちろん上長には先に話は通しておきましたが、そうした提案を受け入れてくれる風土が花王にはあるのです。
▼澤田道隆流・相手を口説く3つのポイント
1. 自分で考えた言葉を使う
2. 相手の反応で内容を変える
3. 今リアルに起きていることを話題に
1955年、大阪府生まれ。81年大阪大学大学院工学研究科修了後、花王石鹸(現・花王)入社。2003年サニタリー研究所長、08年取締役執行役員を経て12年より現職。