上司を説得する。部下を動かす。得意先に買ってもらう――。なぜ、あなたの話は伝わらないのか。結果を出してきた経営トップが、“ゼロ秒で口説く”極意を明かす。

「この人のことが好きだ」と3回念じて会う

野村HDグループ CEO 永井浩二氏

お客様に商品を買っていただくには、まず自分を「好き」になってもらうことが大切です。我々が取り扱っている有価証券は目に見えません。目に見えるプロダクトの場合には、商品自体を気に入って購入してくれることもあるかもしれませんが、証券はそうはいかない。お客様が投資の判断を下す理由は、営業担当者のことが信頼できるのか、好きかどうか。最終的にはここにかかっています。

では、好きになってもらうために、どのように相手とコミュニケーションをとればいいか。ポイントは3つです。

1つは、曖昧にしない、ごまかさないこと。「この商品は必ず値上がりします」と明らかなウソをつく人はめったにいないでしょう。しかし、都合のいい説明に偏ったり、曖昧な伝え方をしている人はいるはずです。

私は入社以来、営業畑を歩んできましたが、この「曖昧さ」で失敗をした経験があります。私がご提案した商品の価格が下がり、お客様にこっぴどく叱られたのです。ただひたすら謝るほかありませんでした。

原因は私の伝え方にありました。たとえば、「この商品は○○のリスクがありますが、それをふまえても○○の理由で値上がりする可能性は高いので、お勧めします」などと、つつみ隠さず伝える。そうすれば、たとえ結果が逆になったとしても、お客様の信頼を損なうことは少ないのです。