飛び込みは何回でも行くべきでしょうか? 私の営業はやみくもな飛び込みではなく、「根拠があってお客様に会いに行く」のです。事前に見込み客を集めたキーパーソンリストをつくり、帝国データバンク、ダイヤモンド社などのリストからフルネームを入手、全館外交をし、セカンドゲイトキーパーからも情報を聞き出す。自信を持ってアプローチするからこそ、何回も行くべきなのです。
この手法で、野村證券仙台支店の新人時代、私は先輩が誰も落とせないでいた仙台一の高額納税者T社長にターゲットを定めました。来る日も来る日も受付嬢に「社長はまだ帰っておりません」と断られつづけましたが、ある日、T社長が確実に帰ってきたことを確認するや、強行突破で社長室のある8階まで非常階段で駆け上り、ガードマンに押さえつけられながらも社長と面会することに成功。
「社長にどうしてもお目にかかりたくて、つい非常階段で上がってきてしまいました。お勧めしたい株がありました。申し訳ありません」と、真摯に謝りました。
すると、「おもしろいやつだな、何を買ったらいいんだ?」とT社長が聞いてこられた。ここで心に決めていた銘柄をお勧めし、めでたく10億の契約を取ることに成功したのです。通うこと50回目の日の出来事でした。
「キーパーソン」を上手に落とすには
営業マンが、真正面から熱い気持ちを伝えれば、苦労の末、今の地位を築いた経営者ならば、「志高く持ち続けていた若い時代」を思い出すのではないでしょうか。実は。T社長は私が50回訪ねているのをご存じでした。なぜならば、受付嬢が「困ります」といいながらも、私の名刺をすべて社長に渡していたのです。私も会話の糸口にでもなれば、と粗品のかわいい貯金箱やシュークリームを差し入れていました。
現場に何回も行けとはこういうことです。現場では現場でしかわからないものが得られる。社長が会社にいる時間、話ができそうなタイミング、どこが社長室かなど。もし、社長が不在であれば情報を取るために全館くまなく営業をする。「株式はやっていません」と、受付で断られても、経理部の本棚に会社四季報や有価証券報告書などがあれば、何かしら行っているに違いありません。挨拶ができた部署の担当者には投資情報をお伝えして親しくなっていきます。
地位のある人には丁寧なのに、一般スタッフや女性の前で、いばったり横柄な態度をとったりする男性が結構いますが、そのような行動はトップにも伝わるもの。どんな人にも礼儀正しく接しておくことも成功への一歩です。
※本記事は書籍『1億稼ぐ 営業の強化書』(市村洋文著・プレジデント社)からの抜粋です。