周囲よりも多く成果を挙げる人がいる。そのためには、日ごろから効率を上げ、結果につながるような努力を続けているに違いない。どんなことを心がけているのだろうか。

知識の融合はネットワーキングから

静岡県焼津市にある日本で第2位の新薬メーカー・アステラス製薬の迫和博製剤研究所長(薬学博士、52歳)は、満面に笑顔があった。

アステラス製薬 技術本部 製剤研究所長 迫和博氏●1986年、熊本大学薬学部卒業後アステラス製薬(旧山之内製薬)入社。静岡県立大学大学院薬学科にて博士号取得。九州大学大学院、神戸大学大学院などで客員教授も務める。

同社が研究する医療用医薬品は、研究(探索研究・最適化研究・開発研究)の段階を経て開発(治験)、生産・技術(工業化研究と生産)――と進み、医療機関に届けられる仕組みだ。この間、平均で9年から17年を要する。

迫氏が率いる製剤研究所は、研究の後期段階の開発研究から工業化研究まで、最適な剤型づくりというミッションを通じて新薬づくりに深くかかわる。この研究所で生まれた固有の製剤技術も数多い。例えば、水に溶けにくい薬物を溶かす技術、薬物の徐放化技術、あるいは薬物送達技術などを駆使して新しい製品を世に送り出している。

内外の開発競争も激しいものがある。研究所の現場では、日々がその緊張感とプレッシャーの連続であろう。そんな製剤研究所の迫所長だが、満面の笑みには特別な理由があった。2011年4月、所長に任命された際、かねてより考えていた「笑顔で接する」を実践した結果だ。というのも、「時間の効率化」を所内に徹底しようと考えたからだ。

笑顔は人との距離感を縮める。難しい顔では情報も入ってはこない。笑顔で接すれば、相手も笑顔になるし話もスムーズに進み時間も短縮できる。

朝礼では時間の大切さを共有しようと定期的に話す。まず締め切りの意識を高め、時間の総量を大切にすること。出張報告は1人1分で済ませよう。30人いたら1分の損失は30分の損失だ。「全員のクロック」を短くしてほしい。そして、会議や報告は最小の人員構成で最短に済ませる、などである。

「僕自身は、効率化の追求でつくった時間に新しい仕事を詰め込みます。そして、また時間を縮めて、を繰り返しています。だから客員教授等の外部の仕事もやれているのです。自分でしかできない仕事を優先し、それ以外は権限委譲を心掛けています」