時間の効率化の発想はネットワークづくりにも生かされる。情報や知識は刺激になり、新しいアイデアを思いつく機会になる。ネットワークを広げることでその機会が増えることになるからだ。

「社内社外との様々なネットワークを広げておかなければ、研究成果にはつながらない」と迫所長。知識や情報は刺激となり、新しいアイデアを思いつくきっかけになる。対話からふとひらめいたアイデアなどをこのノートにどんどん書き留めていく。

「産官学連携はいうまでもなく、学のネットワークも大切です。最新情報も得られるし、世間の情報も入りますから。さらにいえば、医薬工連携。医学・薬学・工学の知識の融合も重要です」

錠剤の製造や大量生産に当たっては、工学的な知識が必要になるのだ。

学でいえば、現在は九州大、神戸大、静岡県立大、熊本大の4つの大学で客員教授の要職にある。大学で講義をすれば教授や学生とのコミュニケーションが図れる。また、理事を務める日本薬剤学会では、世話人として著名講師とも接触するが、これがまた新しい人脈づくりにも繋がっている。

無論、自ら進んで話す努力も欠かせない。「社内や学会の宴会の場では、2時間で100人いたら、1人1分喋れるな、と計算する。3人組だからここで3分話せると。そして必ず2周回り、ほぼ全員と会話をするようにしています」

研究所のホームページもメッセージを伝える場の一つだ。「毎日考えていることを、バッと伝えます。詳しくはいえませんが、自分が得た情報はできるだけシェアするようにしています。特に自分にとって一番インパクトが強かったことなどを書きます。最近では、製剤研以外の人もアクセスしているようですが(笑)」

だが、やはり対面でのコミュニケーションには及ばない。

期の初めなどの区切り目などには全員を集め、現在の状況などを説明するほか研究室ごと、また重要プロジェクトのリーダーや研究室を束ねる人たちとも直接に細かい話をする。

厳しい研究の世界で難しいのは、成果の評価法であろう。

迫氏は、門外漢には意外に思えることを明かした。

「研究を早めにやめた人も僕は評価の対象にします。それ以上成果が出ないテーマを長くやるのが一番時間の無駄になりますから。残念ですが、研究というのはほとんど失敗するのが現実。新製品に至るものは数えるくらいしかない。無論、僕らの目から見て成功しそうな線が残っておればやめることはないし、成功に結びつくアドバイスもします」

この世界ではそれだけスピードが要求されているということなのだろう。