現場での研修以外に、集合研修も大幅に拡充された。春の4週間だけだった集合研修は、春と夏の2回に分けて計11週間行われ、トヨタの歴史を学ぶなど会社理解のプログラムのほか、ドライビングレッスンなど、トヨタパーソンとして「クルマへの興味・関心を向上する」ための研修が加わった。

そうした研修の1つが、今回取材した「モノづくり研修」だ。なんとこの研修では、3日間かけて手作業でエンジンとトランスミッションの組み付けを行う。以前は技術系の新人がメインに受講していたが、3年ほど前から文系の事務職も含めた新入社員全員が受講することになった。

当然のことながら、現在のトヨタでは、生産工程はほぼオートメーション化されており、ネジを一本一本手で締めてエンジンを組み付ける現場は国内にはほぼない。また、ハイブリッド車の販売比率も年々高まってきており、50年にはガソリン、ディーゼル車の新車発売をほぼゼロにする、といった方針も掲げている。なぜ、今になってエンジンの組み立て研修なのか。答えを求めて愛知県豊田市の元町工場内にあるTPS推進センターを訪ねた。

新入社員向けの「モノづくり研修」が行われていたのは、以前エスティマの生産を行っていたという工場の一角。現在は技能系の研修施設として活用されている。朝8時、作業着にヘルメット姿で集まったのは男女8人の新入社員たち。安全靴を履き、作業用保護メガネ、軍手までしっかり身につけ、準備万端だ。

集合時間となり、「おはようございます」と声をかけたのは昭和46年入社、この道45年という製造のスペシャリストだ。定年退職後、嘱託契約で勤務し、研修の講師を務める。

「モノづくり研修」は3日間かけて行われる。最初の2日間でエンジンの組み付けを行い、3日目はトランスミッションの組み付けを行うという。研修を見学したのは、エンジン組み付けの2日目。予定表を見ると朝から16時まで「バランスシャフト組み付け、クランクシャフト組み付け、ピストン組み付け……」と、ひたすら部品の組み付け作業が続く。その後、理解度テストと振り返りがあり、17時に終了、というプログラムだ。