地方創生支援制度で長島町へ

【田原】それを制度化したものが、井上さんが提案して実現した「地方創生人材支援制度」になるのかな。これはどういうものですか。

【井上】人口5万人以下の小さな市町村に、官僚や大学の先生、町づくりの専門家などを派遣する制度です。これまでも国が一方的に人材を派遣する仕組みはあったのですが、これは市町村側に自分たちの町の課題を考えてもらい、どのような人が必要であるかを出してもらってからマッチングを行います。

【田原】井上さんは、この制度を使って長島町に行ったのですね。長島町は自分で選んだのですか。

【井上】いえ、行き先は人事に預けました。制度を提案した人がどこそこに行きたいというと、「あいつは自分が好き勝手やるために制度をつくったのか」と言われてしまいますから。

【田原】長島町はどんな町ですか。

【井上】ブリ養殖世界一の町です。漁協の正組合員が約350人いて、漁協の職員や加工するパートさん、運送会社などの関連産業まで含めると1000人近くの人がブリ養殖で生計を立てています。農業も盛んで、じゃがいも、牛、豚、鶏、みかん、たけのこが特産品です。

【田原】人口はどうですか。地図を見ると橋でつながっているようですが、ほとんど島ですよね。鹿児島空港からもずいぶんと離れている。やっぱり過疎化してますか。

【井上】1960年は2万人ぐらいでしたが、いまは半分の約1.1万人です。

【田原】典型的な過疎の町ですね。長島町への派遣が決まったとき、行きたくないとは思わなかったですか。

【井上】いや、まったく。むしろ心配だったのは、自分が行って受け入れてもらえるかどうか。最初は不安でしたが、地元の人もすぐ理解して仲間になってくれたので、1週目にはその不安もなくなっていました。

【田原】いきなり副町長としてやってくると、上から何だという話にはならないの?

【井上】最初は課長級の役職で入って3カ月やりました。それでみなさんか「井上君は面白い」と言ってくださり、議会で承認を得て副町長にしてもらいました。

【田原】なるほど。国からの押し付けではなく、まさに長島町が望んで副町長にしたのですね。