地方の課題は「地域作りが昔のジャイアンツになっている」こと
【田原】全国のいろんなところに行って、あらためて地方の課題は何だと思いましたか。
【井上】全国を回って感じたのは、地域づくりが昔のジャイアンツになってるなと。昔のジャイアンツは、4番ファーストタイプの選手ばかり集めて、チームとしてあまり機能していなかったじゃないですか。地域づくりも似たところがあって、主役しかいないんです。その結果、地域として機能していなかったり、地域が抱える課題が放置されたりしています。そうではなく、主役以外にもいろいろな人の力を借りたほうがいい。
【田原】地域の外から、4番バッター以外を連れてくるということ?
【井上】野球ではなくサッカーのたとえになりますが、ある問題を解決するときに1人でドリブルしたり、地域の中でパスを回し合うだけでは限界があります。本当はもっと最適なプレーヤーはいて、場合によってロングパスやバックパスをしたほうがいいこともあるはず。広い視野で地域外の人と組むことはとても重要です。
【田原】広い視野で連携って、具体的にはどういうことですか。
【井上】たとえばいま僕がいる鹿児島県長島町は食のブランド化が課題の1つです。ただ、自分たちだけで考えるとどうしても視野が狭くなります。そこでいまは大阪の辻調理師専門学校と協定を結び、先生や卒業生が現地で生産者にアドバイスしたり、卒業生の口コミで食材を販売しています。そのほうが地元の人だけでやるより効果的な手が打てる。僕は、そうやっていろんな人たちをつなぐ地域のミツバチになりたいのです。
【田原】地域のミツバチですか。地域を飛び回るうちに、花粉を運ぶようにして人と人をくっつけるイメージかな。面白いキャッチフレーズですね。
【井上】霞が関から深夜遅く帰るときタクシーの中で思いつきました。神山町は菜の花畑がきれいなのですが、そこにミツバチが飛んでいる絵がふと浮かんできて。