経営者やOLがひとりで来ては、毒素を抜いて帰る
結論から言えば、「事前の情報」をはるかに超える魅力に、私はひたすら圧倒され続けた。聞けばうっとりするに違いないスリランカ旅行の魅力は後述するとして、まずは、ニュースをお耳に入れたい。
それは、私以外の日本人客のことだ。
私が滞在したのは、文化三角地帯(歴代王朝を築いた3地点を直線で結んだエリア。遺跡が多く巡礼の地でもある)の中に位置するアーユルヴェーダ宿泊施設「アーユピヤサ」だ。
空港のあるコロンボから車で3時間の密林に、ひっそりと佇む。まわりには何もない。夜になると漆黒の闇に包まれる。リゾートホテルという浮ついた言葉ではなく、「宿泊施設」とあえて表したくなる空間だ。「リトリート」とも言える。
医療施設の認定もされているそうだ。日本人とスリランカ人の共同経営なのでサービスは細やか。日本語が話せるスリランカ人マネジャーが常駐しているのは心強い。敷地面積は東京ドームほどもあるのに、客は最高12人しかとらないという。なぜか。従業員によれば「いっぱいな感じにしたくないから」だそうだ。いやはや、なんとも贅沢な話である。
で、レストランなどで他の客をウォッチングしていると、不思議な現象を発見した。
ひとり客が多いのだ。飛行機の到着時間の関係で、夜ごとにひとりずつ客が訪れ、そして翌日ひとりずつ帰っていく。滞在中、途切れることなく、そのローテーションが続いた。まるで打合せでもしたかのように、規則的にひとり客が出入りした。
例えば、こぎれいな(でもちょっと疲れた)OL風な女性が小さめなトランクひとつでやってくる。他にも、近隣のアジアを回って週末を使用してやってきたバリキャリOL(推定30代半ば)、ネットで見つけて初ひとり旅に臨んだOL(推定20代前半)、ビジネスクラスで優雅にやってきたOL(推定40代)、そしてリタイヤした60代父と30代娘の親子。女子たちはみな独身と推察された。
その誰もが、毒素が抜けたような実にすっきりとした顔をして日本へ帰っていった。