権限を持てば持つほど「公私混同」する

実は、権限を持てば持つほど、「公私混同」をしがちなのが人間です。舛添氏を見るまでもなく、正しい経営や正しい生き方の勉強をしていない人ほど、権限を持てば持つほど公私混同をしてしまいます。

会社がダメになる大きな原因はいくつかあります。

ひとつは方向付けを誤ることですが、もうひとつ多いのは、経営者の公私混同です。経営者が公私混同すれば、部下は働く気をなくします。経営者の高級車や家族旅行のために、一生懸命頑張って働こうなどという部下はだれもいないでしょう。そうすると、余計に組織のパフォーマンスが悪くなり、業績は下がりますから、経営者もたいした給与を取れず、余計に公私混同をしてしまうのです。悪循環です。

これは、何も経営者に限らず、すべてのリーダーに言えることです。リーダーの公私混同は、人間的に不適切な行為であるだけでなく、チーム全体のパフォーマンスに大きな影響を与えることは間違いがありません。

それではどうすればいいのか。

私は経営者などに次のようにアドバイスしています。「部下が同じことをやっても許せるか」という基準です。会社のお金で経営者が家族旅行をするなら、部下にもそれを許すべきです。もし、それを許さないのなら、自身もやめるべきです。

会社の車を使ってプライベートでゴルフに行くなら、営業車の個人的使用を部下に認めるべきです。会社のお金でセミナーに参加し、居眠りするなら、部下が同じことをやっても許せるかということなのです。

私はリーダーに聖人君子になれと言っているのではありません。

私だってなれません。しかし、リーダーには会社や自分が預かる組織を良くする責務があるのです。公私混同をなくし、良い会社、良い組織を築き、そして高いパフォーマンスを上げて高い給与を取り、疑義のある時には自分のお金を使うのです。時間の使い方も同じです。なかなか難しいですが、意識をして過ごすことが大切ですね。

経営コンサルタント 小宮一慶(こみや・かずよし)
1957年生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行入行。86年米ダートマス大学経営大学院でMBA取得。帰国後、経営戦略業務などに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役就任。96年小宮コンサルタンツ設立。企業経営の助言の他、講演や執筆も。最新著は『松下幸之助 パワーワード ―強いリーダーをつくる114の金言』(主婦の友社)、『小宮一慶の1分で読む!「日経新聞」最大活用術 2015年版』(日本経済新聞出版社)、『No1コンサルタントが教える 20代の後悔しない働き方』(青春出版社)、『一流に変わる仕事力』(中経出版)など。
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