当初なぜ、ペットボトル「伊右衛門」を断った?

福寿園は今年で創業226年目、福井家は創業者の福井伊右衛門から数えて、私で8代目になります。

福寿園会長 福井正憲氏

創業の地である京都・山城は、もともと伊賀街道と奈良街道の交点で、名古屋、大阪、京都、奈良のちょうど交差点に当たり、交通の要衝として諸物が集まりやすい土地でした。貿易でも“東の神戸”といわれるくらい繁盛したことで、お茶も集まってきたのです。

もともと創業者の伊右衛門は綿など諸物を扱っていましたが、お茶一本に絞り商いを拡大させてきました。ただ、福井家の家訓「無声呼人」、文字通り、「声なくして、人を呼ぶ」を最初に誰がいつ掲げたのか正確にはわかっていません。親父もこれが家訓だと聞いていたようですが、早くに亡くなったので、細かい話は聞けませんでした。

戦後、バナナの叩き売りというものがありましたが、そうしたかけ声で売るのではなくて、良いものは自然に売れていく。逆にいえば、徳を積むこと、自分を磨くことによって人が集まる。お金を儲けるというより、商品にも徳や品格が必要であり、それがあれば、自然と商売は成り立つという意味が込められています。

そして、もう1つの家訓と言うべきものが、「つもり十訓」です。「儲けるつもりで損するのが商売」「あるつもりでないのが財産」「ないつもりであるのが借金」「飾るつもりで剥げるのが嘘」……と私の寝室にかかっていたので今でも簡単に暗唱できるほどです(笑)。これは社員にも読ませており、「無声呼人」と一緒に社員手帳に載せています。