自分の能力とは何かと見極めることが必要
弱い人を守りたい――。その思いを秘めて、弁護士として活動を始めた。2010年、過労死問題に関わってきた弁護士25人ほどとともに、「自死遺族支援弁護団」を発足させた。自ら命を絶った人や遺族の権利や生活を守るために、講演、シンポジウムにも講師やパネラーとして参加する。
弁護士になってから、学歴について意識することはほとんどないという。
「中大卒の弁護士たちが、互いに仕事を紹介し合うことは以前はあったようですが、今は少なくなっていると思います。弁護士が増え、過当競争になっていますから、そのような余力がないのでしょう。得意分野に特化する弁護士が増えているように思います」
広い視野で社会を見つめることができる経験も積んだ。ボクシングジムに通い、カバン屋、蒲焼屋、洋服屋、銀行員、海上保安庁職員、鳶職、造船工場の作業員などと親しくなった。
和泉さんは、人事の処遇や扱いに悩む会社員の思いがよくわかるとも話す。
「私は司法試験にすぐに受かりませんでしたから、これが自分の進む道なのかな、と迷う人の思いがわかるつもりです。自分の能力が認められるところにいるか否か。このことは、大切です。
まず、自分の能力とは何かと見極めることが必要です。それができれば、どこでどのように生きていくのかがわかってきます。漠然としたとらえ方ではなく、能力を細かくして、それぞれの力を見つめ直します。私は、1つのことを徹底して考え抜く力や、依頼人の考え、思いや心情を察したり、くみ取ったりする力があると思っています。
何よりも、私は弱い人のために仕事がしたいのです。現在、勤務する事務所は、そのような能力を生かすことができる職場だと思っています」
和泉さんは現在、多数の過労自殺の裁判などに関わっている。