「合併」を機に、司法書士の世界へ

司法書士の秋山淳さん(43歳)は、全国クレサラ・生活再建問題被害者連絡協議会の事務局長として知られる。金融機関やカード会社、サラ金、街金融などから借金をしたものの、様々な事情により、返済をすることができなくなった人を救う組織である。

司法書士の秋山淳さん。早稲田大学教育学部卒。

被害者から依頼を受け、秋山さんは借金返済を強く迫る男性たちと話し合うこともある。そのような男性たちが、事務所に現れることもある。秋山さんは、淡々と語る。

「その場においては、彼らは脅したり、怒鳴ったりすることはありません。むしろ、冷静で、紳士的にふるまいます。弁護士をともない、現れることもあります。その場合は、意見や考えを闘わせることになります。彼らのことを怖いと思ったら、この仕事はできません。被害者を守ることは、誰かがしなければいけないのですから……」

被害者が取り立てをされている会社を秋山さんが訪ねたところ、入り口付近で、街金融の男性たちから囲まれ、「何をしに来たのか? 事務所へ入れ!」とすごまれたこともあるという。

機会あるごとに、新聞やテレビなどのメディアに登場し、被害者の権利や生活を守ることを訴える。最近は、海外のメディアからの取材も受ける。全国各地での講演やシンポジウムなどに講演者やパネラーとして参加する。

1992年4月、早稲田大学教育学部社会学科(社会科学専修)に入学し、96年3月に卒業した。同年4月、IT企業に就職。就職活動を自己採点すると、60点とつけるようだ。

「就職氷河期といわれた時期に、希望する会社から内定をいただいたことには満足しています。この時点では、生涯にわたり、こういう仕事をしていくといった明確な考えがあまりなかったのです。そのあたりがマイナス点になるか、と思います」

入社2年目になった頃、合併の話を社内で耳にするようになり、早いうちに現実のものとなる。勤務していた会社が吸収される側であることを知り、退職を考え始める。上司や先輩社員から、会社に残ることを促された。ほかの大手メーカーなどからも、ハンティングをされる。

それでも、秋山さんは司法書士の道へ進もうと決意した。

「もともと、独立心が旺盛でした。これを機に、いずれ、独立できる職業に進んだほうがいいと考えたのです。司法書士の世界は、会社員以上に実力主義だと聞いていました。学歴や年齢、性別も関係ありません。そのようなところで生きていきたいと思ったのです」