起業時代

▼経営モデルをゼロから生み出す

──お二人は、ともに起業し、事業を軌道に乗せていく中で、それぞれ「アメーバ経営」「単品管理」と独自の経営モデルを生み出されました。その経緯を教えていただけますか。
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稲盛和夫氏と鈴木敏文氏の経歴

【稲盛】アメーバ経営が生まれたのはとても単純な経緯でした。創業から4、5年経ち、社員が100人を超える規模になっても、私は技術開発も、製造も責任者を務め、販売もトップセールスで走り回っていたため、体がいくつあっても足りません。

私の代わりができる人がほしい。孫悟空みたいに、毛を抜いて息を吹きかけると現れるような分身を大勢つくりたい。ならば、全員が経営責任者になればいい。私は技術者で、経営は素人でしたが、素人なりに考えたのがアメーバ経営でした。

製造の組織を工程別・製品別に小さな集団に分け、それぞれが1つの独立した企業のように経営を任され、独立採算で運営する。小集団のリーダーは経営に責任を持つ。小集団は環境の変化に適応して、自己増殖していくため、アメーバと名づけました。

原料をつくるアメーバは次の成形のアメーバに値段をつけて売り、成形のアメーバは次の焼成のアメーバに売るといった具合に社内売買を行う。値決めは、出荷時の最終的な売値から逆算して決めるため、常に市場価格と直結します。それぞれに仕入れと売りがあるため、そのサヤが利益となって出る。リーダーと構成メンバーが一緒になって懸命に努力すれば、アメーバの業績も上がると考えたわけです。