──介護事業の課題は。
【遠藤】事業の一番の柱は、現場のスタッフが、いかに高いモチベーションを保ちながら仕事に従事できるかだ。スタッフと話すと、自身の技術を向上させ、入居者の方に喜ばれたいという思いが強いことがわかった。その思いに応えるためには、まず教育体制の強化が急務だ。介護技術をはじめ、メンタルの問題も含めて、教育を受けられる体制をつくること。そこにこそ資本力のある我々が参入した意味がある。現状は、現場の教育係である「介護主任」が忙しすぎて、新人スタッフを教育する時間が取れない実態がある。それに対して我々は、本部の研修体制を充実させるとともに、介護主任がOJTできる体制をとりたいと考えている。
──とはいえ、人材不足は業界全体の問題となっている。
【遠藤】現場の作業効率の改善のため、ITなどの最新技術を積極的に導入していきたい。センサー技術を活用し、入居者の体調変化を感知したり、事故を防ぐ「見守りシステム」や、介助ロボットなどの研究開発が進んでいる。実用化すれば、介護現場の生産性向上につながるはずだ。
また、待遇面の引き上げについても責任を持って取り組んでいきたい。給与を上げることはもちろん、長年にわたり貢献した人や、技術を身につけた人を厚遇する仕組みも必要だ。それが、入居者の安全や心地よさに直結すると考えている。今後、人材確保はさらに難しくなる。この業界の待遇改善に、我々が先鞭をつける役割を果たしたい。
──介護事業の次の展開は。
【遠藤】ワタミの介護はスタッフの丁寧なケアに定評があった。その強みを今後も活かしていくために、機械に委ねられる部分は委ね、人間にしかできないハートフルなサービスを大事にしていきたい。SOMPOホールディングスとしては、介護保険と介護サービスの連携や、リフォームの子会社による介護リフォームなどを検討中だ。大手資本の優位性を活かし、我々ができることにトライしていくことが、介護業界の変革につながると考えている。
1954年、東京都生まれ。76年早稲田大学政治経済学部卒業後、安田火災海上保険(現損害保険ジャパン日本興亜)入社。自動車営業企画部長、専務執行役員、損保ジャパン日本興亜保険サービス会長などを経て、2015年12月より現職。