「夏≒ハレ」シフトはいつまで続く?
ビールやバーベキュー、そしてそれらを楽しむテラス席をウリにした飲食店の人気が高まる一方で、鍋やおでんにはあまり注目が集まっていません。こうした現象を「飲食業界の夏シフト」と表現することができるでしょう。なぜこうしたことが起きているのでしょうか。
もちろん背景には「温暖化」の影響もあるのかもしれません(実際の気温というよりも、体感温度の問題かもしれませんが)。しかし、それだけではなく、そこには人々の心理的要因も影響していそうです。外食に対して「開放感・解放感」や「少し高めのテンション」、「仲間とワイワイ」といった価値を求める気分の高まりを感じるのです。
この数年ずっと続いている「ワインバル」や「ビストロ」への人気も、こうした気分と相性が良いものです。カジュアルなワインとボリューム感ある肉料理は、解放感を味わったり、テンションを上げたりするにはもってこいでしょう。それらのバルやビストロにテラス席があることが多いのは、決して偶然ではないはずです。
飲食業界の「夏シフト」は一体いつまで続くでしょう。ビオワイン、サードウェーブコーヒーなどによって、多少「静的」な気配の高まりは感じるものの、まだしばらくこのトレンドは続いていくのではないでしょうか。
子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食プロデューサー。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/