年齢による昇給が見込みにくい物流業界
グラフは、企業規模ごとの年齢別・年間賃金(時間外手当含む)の比較です。この業種の特徴は、年齢による給与水準アップが見込みにくいことです。
ドライバーや倉庫作業に従事する人材の割合が多く、経験年数に比例して仕事の生産性が上昇していく業務が少ないからです。たとえば、トラックで東京から大阪まで荷物を運ぶとします。不慣れな新人を除けば、3年目の若手運転手も30年目のベテラン運転手も、到着スピードに大きな差はありません。ベテランになれば、渋滞する時間帯や裏道に詳しいといったことはあるかもしれませんが、カーナビ機能や会社からの情報提供で十分補えます。むしろ、荷物の積み下ろしなどは、体力に勝る若手の方が早いかもしれません。
仕事の生産性に変わりがなければ、年功賃金を維持することは困難です。物流業界の経営環境の厳しさは、ドライバーなどの賃金や労働環境にシワ寄せを及ぼしているのです。
このような状況は、当然「ドライバー不足」というかたちで、物流会社に跳ね返ってきます。高齢化と若年層の業界離れが進む中で、現時点でもすでにトラック運転手は不足の状況にあります。さらに、このままの傾向が続くと、将来的にはより深刻なドライバー不足に陥ることとなり、国内の物流全体に大きな支障を及ぼす恐れも危惧されています。
運輸・物流業界は、典型的な労働集約型産業です。いかにしてドライバー不足の問題に対応するかが、全ての運送事業者にとって大きな課題になっているのです。
これらは、物流業界だけでなく、バス会社など旅客業界も同様です。路線バスも観光バスも、慢性的な人手不足です。
確かに、注文した荷物がその日のうちに届くネット通販、新幹線の3分の1程度の料金で利用できる深夜バスは、便利な社会といえるでしょう。しかし、すでに佐川急便はAmazonとの取引から撤退しました。いずれ、ヤマト運輸も撤退しないとは言い切れません。また、格安ツアーにおける高速バスの事故も繰り返されています。極度な便利さと安さの代償は、結局利用者に跳ね返ってくるのです。