人口が増加するだけではなく、移動もより激しさを増す。出生国と異なる国に住んでいる人口は現在、2億人だが、50年には15億人に達し、そのうち5億人は生まれた大陸とは別の大陸に住むことになる。そのような状況下で、日本国内だけを見据えていてはうまくいかないのは言うまでもないだろう。
現在、アフリカには10億人以上が暮らしているが、50年には倍の20億人になる。潜在的な超巨大市場に、日本人経営者の多くがまだ気づいていない。アフリカはいつまでも貧しい大陸のままではないのだ。
世界的な人口増は食糧問題を今以上に深刻化させるだろうが、同時に技術革新のチャンスでもある。なぜなら人口の伸びは、ポテンシャルの伸びでもあり、経済だけにとどまらず、テクノロジーにも新たな可能性を提示してくれるからだ。今後の動向を見逃せないテクノロジーとして、少なくとも4つの分野が挙げられる。
まずITと、それに付随して生まれたデジタル・エコノミー。そして、遺伝子分野。農業や医薬品の世界を変えてきた技術だが、研究段階から実用段階に移ったナノテクノロジーと合わさり、大きな変革が起こってくるだろう。また、エネルギー生産も、新たな太陽電池の登場により、パラダイムシフトが起こる。最後に、今後、最も重要になるであろう技術がニューロサイエンスだ。高齢化が進めば健康・医療分野は成長セクターになるし、十分な教育を受けた人口を増やすためにも欠かせない技術になる。
ただ、世界的な人口増加に、日本はこのままいけば取り残されることになる。それを避けるためには、保護主義に走ることなく、日本という国自体も変わる必要がある。特に経営者たちは率先して外国に出て、より多くのことを学ぶべきだ。そうすれば、外国人と接することで失うものよりも、得るもののほうがはるかに多いと気づくことができるだろう。特に日本の場合は、輸出なしでは国が成り立たない。国境を閉ざすことは破滅的な失敗を招くだろう。