第三次世界大戦の危機が迫っている
かつては人類の進歩にともなって、戦争はなくなると考えられていたが、シリアでも、イラクでも戦争は続いている。肝に銘じておくべきは、数年前よりも確実に、第三次世界大戦の危機が迫ってきているということだ。20世紀を振り返ってみると、1907年に米国で金融危機が発生し、保護主義が台頭。政治は大衆迎合主義に走り、14年には第一次世界大戦が勃発した。現在の世界情勢は、まるで20世紀初頭をなぞるように、非常に似通っている。
私の国、フランスでも、2015年末に行われた地方議会選挙において極右政党の国民戦線が注目された。しかし、ある国が自分たちだけを守れればいいと保護主義を取ることは、世界レベルでの紛争を巻き起こす火種にしかならない。
極右勢力台頭の裏には、テロへの恐怖がある。フランスで発生したテロ事件を受けて、多くの日本人が祈りを捧げてくれたことを私は知っている。ただ、テロの標的になっているのはフランスばかりではない。ここ数カ月だけを見てみても、英国、米国、ロシア、ベルギーなど、多くの国でテロが発生している。
なぜテロが起こるのか。その理由に移民政策を挙げる人がいる。では移民を受け入れなければ、問題は起こらないのか。賢明な読者であれば、そうではないとわかっているだろう。
フランスに限った話ではない。移民は脅威ではなく、国際競争で勝つための原動力になる。世界第1位の米国経済も、移民なしでは成り立たない。世界の国々は、移民の受け入れ可能なスピードを探っている段階にある。
文化、教育、住居など、さまざまな要素を勘案しながら、いずれはうまくいくやり方を見つけることができるはずだ。
(唐仁原俊博=構成 葛西亜理沙=撮影 ワークスアプリケーションズ「COMPANY Forum2015」=取材協力)