なぜオンライン講座は飽きずに続けられるのか

三宅義和・イーオン社長

【三宅】ITも英語も手段であって、それそのものが目的ではない。こういった便利なものを使って、自分が何に関わって何をやるかということです。ただ、その際、子どもたちがスマホやタブレットを使う場合に、有害なサイトなど気をつけるべき点もありますね。

【伊能】自由に使ってもらいたいのですが、あまり好ましくない情報も世の中に溢れています。あるいは、逆に悪徳業者からアクセスされてしまうというリスクも否定できません。そういったセキュリティをどう確保していくかということと、子どもにとってふさわしいコンテンツをこちらが選んで提供していく。子どもの場合は年齢に応じて、キュレーション(収集・分類)してあげるということも重要だと考えています。

【三宅】私どもの生徒さんの保護者と話をすると、「なかなか机には向かわないけれども、デジタルでやる勉強であればいくらでも何時間でもやる」という子どももいるそうです(笑)。本当にうまく利用していくということでしょうね。

さて、本題の「gacco」に話を進めたいと思います。2012年頃にアメリカで本格化した「MOOC」(大規模公開オンライン講座)の初の日本版のサービスだと伺っています。Web上で、有名な大学の先生の講義などを無料で学ぶことができる。しかも、修了証も得ることができるという画期的なものです。本来なら、受講料を払って講義を聞くわけですから、ひと昔前であれば信じられないようなシステムです。

【伊能】人気講義のネットへの配信は10年前ぐらいからあったのですが、その頃は90分の授業を、1台のカメラで撮るだけでした。本来は教室にいる生徒向けのものを、ネットを介して見続けるというのはなかなかできません。その点、「MOOC」は最初からオンラインで見ることを前提として撮り下ろして、編集しています。とにかく、飽きずに続けられるようなスタイルが採用されているっていうことと、無料ということが最大の差異化要因でしょう。

ビジネスモデルは、これから多様化してくると思うんですが、基本的には講義を見て掲示板でコミュニケーションし、クイズを毎週やって、最終テスト、あるいは最終レポートを提出して一定のレベルに達していれば、修了証を発行します。

【三宅】1回の講座は10分くらいでしょうか。確かに90分というのはずっと見るのはしんどいですからね。

【伊能】1回10分以下を基本的なスタイルにしています。視聴の仕方はいろいろあると思います。1週間分が週ごとに配信されるので、その日にまとめて観てしまうという人もいますし、土日に集中的に取り組む人もいます。もちろん、1日1回をきっちりと守る人もいます。

【三宅】最近の講座を拝見すると、法政大学の田中優子総長の「江戸文化入門」とか「グローバリゼーション下の日本経済と日本企業」(立教大学)と魅力的です。さらに「対面学習コース」もあるようですね。

【伊能】この「MOOC」のスタイルは、1回公開したら、ずっとアップしたままではなくて、コースになっているので、だいたい4週間、長いものは8週間で終わりクローズします。ただ、人気があるもの、また要望があるものについては再開講というケースもあります。ですから、始まって終わるを繰り返す感じです。