金融市場の発展に大きく貢献する可能性も

金融リテラシーの向上という課題は、バブル崩壊以降も30年近く問題視されている。日本の個人金融資産におけるリスク運用(株・債券・投資信託等)は16.4%(約276兆円)しかなく、欧米における30~60%水準とのギャップは中々縮まらない。リスク資産への投資を通じて「お金」が有効活用されていないのだ。

ロボ・アドバイザーとそのFinTech技術は、上記日本の状況を改善する可能性を持っている。

理由その1.銀行員、証券マン、FP(フィナンシャル・プランナー)、保険外交員……。金融マン(ウーマン)は誰だろうが、「ヒト」である以上、どうしても「都合の良い金融商品や運用を薦めようとしているのかもしれない」と思われがちだ。被害妄想も含め、「自分」が最優先されているのか不安が付きまとう。ロボ・アドバイザーにはその要素が無く、全てが定量的な計算に基づいている。定性的な要素はまったくない。

理由その2.米国で当初ロボ・アドバイザーのサービスを利用したのは、オンライン証券やディスカウント証券等で、「低コスト」趣向の投資家層だ。「ヒト」アドバイザーにかかる費用が嫌で、低リスク運用(MMFや預金)と、低コストなハイリスク運用(ディスカウント・オンラインだが、情報がある程度欠如している為にリスクが高い)に分けて運用していた資金が流入した。同様のニーズは日本でもある。

理由その3.実際に一任運用をするシステムなのか、それとも推奨ポートフォリオを提示するのか。どちらでも良い。複数アセットで運用期間別にどういった結果になり得るのか? 自分の将来資産がどうなり得るのか、を想像させる。この作業が何よりも重要だ。

欧米とは異なる展開が想定されるが、眠る個人金融資産1700兆円への刺激を期待したい。

おことわり:本コラムの内容はすべて執筆者の個人的な見解であり、トムソン・ロイターの公式的な見解を示すものではありません。

[脚注・参考資料]
[注1]Credit Suisse(2015年10月)
[注2]ビル・ゲイツ氏の言葉

渡邊竜士(わたなべ・りゅうし)●トムソン・ロイター・マーケッツ執行役員。1972年、東京都生まれ、米国育ち。96年慶應義塾大学総合政策学部卒、同年野村證券入社。99年スイス野村バンク、2006年野村證券グローバルヘッジファンドセールスなど、主に国際部門にて経験を重ねる。12年野村インターナショナル(香港)のマネージング・ダイレクターを経て、14年よりトムソン・ロイター・マーケッツに入社して現職。トムソン・ロイターの経営企画や営業戦略等を担当している。
→トムソン・ロイター・ジャパン ViewPoint http://viewpoint.thomsonreutersjapan.jp/
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