もうひとつは、母親主導の教育になって、たまに帰ってきた父親があまりにも叱りすぎるため、萎縮してしまうケース。たとえばワコール社長の塚本能交氏は、父であり創業者の幸一氏に怒られすぎて引っ込み思案になり、一時期、思うような経営ができませんでした。ユニ・チャーム社長の高原豪久氏、ドトールコーヒー社長の鳥羽豊氏も、相当叱られているのではないでしょうか」
2011年、突然倒産した岡山県の名門バイオ企業だった林原も、徹底した長男至上主義を貫き、しつけがきびしい環境だった。社長だった林原健氏が、父から手をあげられ反発を覚えたと告白している。
何より長男は大変だ。うまくいけば親のおかげだし、失敗すればバカ息子の烙印を押され、なんとも荷が重い。さらに初めての子どもということで親の思い入れが強いのか、長男のプライドが高いのか、大きな親子の衝突へと発展することもしばしばある。世間をにぎわせた大塚家具の騒動も、結果的に大塚久美子氏が社長に収まったが、父親と長女の対立だった。
いさかいが起きた結果、長男は会社からパージされたり、社内で飼い殺しにされたりするケースも目立つ。
プレッシャーも小さく、躍進しやすいのが、次男である。日清食品の場合、創業者・安藤百福氏と対立した長男は社を離れ、今は次男の宏基氏が社長に。USEN(旧・大阪有線放送)会長の宇野康秀氏も、父と長男が衝突を起こし、次男が継いだケースである。
「だから長男で立派な後継者に育ったトヨタの豊田章男氏は、非常に稀有な存在なんですよ」(國貞氏)
子どものウソを見つけたら、黙認するにせよ、叱るにせよ、親子の関係が崩れないよう、加減を上手に調整することが問われるのだろう。
調査概要●年収1000万円以上で「自分は幸運だ」と思っている人(幸運者)と、年収300万円以下で「自分は不運だ」と思っている人(不運者)、各100人にアンケート調査を実施した。