実際、認知科学では、最高のパフォーマンスを挙げることができる「フロー」の状態は、むしろリラックスすることで得られることがわかっている。集中しているが、同時に、リラックスしている。そのようなときにこそ、自分の実力を発揮できるのだ。

「フロー」の状態を、アスリートは「ゾーン」とも呼ぶ。ボルト選手も、その走りを見ていると、むしろリラックスしているように見える。余計な力が入らず、ゆったりとした気持ちでいることが、金メダルにつながるのである。

では、本番で、緊張するのではなく、集中しているがリラックスしている「フロー」の状態に入るためにはどうすればいいのか? 鍵になるのは、普段から自分にプレッシャーをかける練習をしておくことである。

日常の中で、仕事をしたり、勉強をしたりしているときに、ある意味では本番以上のプレッシャーを自分にかける。そのプレッシャーの中で練習していると、本番ではむしろリラックスできる。

いつも速い球を見ていると豪速球でもゆっくり見えるというたとえのように、普段から自分にプレッシャーをかけることで、本番ではむしろリラックスできるのだ。

本番に弱い、という人の話を聞いていると、普段の生活がリラックスしすぎている場合が多い。1日に1回くらい、それこそ世界陸上の決勝くらいのプレッシャーを自分にかけられれば、本番に強くなることができる。

自分で自分にプレッシャーをかける方法の利点は、そのレベルを調整できることだ。きついと思ったら、緩めればいい。

自分にかけるプレッシャーのレベルを調整することで、本番に強くなり、潜在能力を伸ばすことができるのである。

(写真=時事通信フォト)
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