高校3年間哲学が必修なのはフランスだけ

【三宅】福原さんの著書に『世界のエリートはなぜ哲学を学ぶのか?』がありますが、やはり、こういったところも本質的に重要であると考えているのですか。

【福原】哲学は中高生が学ぶには一番向いています。考え続けないといけないので、思考力を鍛えるには最高の方法なんです。数学ももちろんいいんですが、数学って問題が解けると、終わった気になりますよね。でも、哲学には決まった答えはありません。永遠に探究を続けないといけないんですね。1つ解けた気がしても、さらに奥があるということですから、哲学ほどいいものはないと思っています。

【三宅】それは多様性を認めるということでしょう。世の中にはいろんな考えがあって、自分の解答だけが正しいということはありません。日本人はどうもAかBか、英語のレッスンでも外国人がいいか、日本人教師か、一対一か、グループレッスンがいいかと、白黒をはっきりさせたがります。しかし、現実はそうではなく、あれがよいが、これもよいという場合がいくらでもあるわけです。相手の意見をしっかり聞くことで、それでまた自分の意見が深まっていくというね。そういうことがすごく大事ですよね。

【福原】大学のときにフランスにホームステイに行きました。最初のホストファミリーから手渡されたのが「自由・平等・博愛」について書かれた小冊子でした。田舎で料理教室を営んでいる主婦が「フランスに来た以上、あなたはこれを完全に理解して、民主主義とは何かということを理解しないといけない」と言って、毎日のように議論したわけです。

【三宅】それはまたすごいですね。

【福原】さすがに、自分たちの手で民主主義を勝ち取った国民です。そのすごさを実感したわけです。子供の頃から哲学を学んで、高校3年間は哲学が必修という国は世界でフランスだけです。

つまり、国民全員が哲学を学んできているので、言論の自由や政治的行動のバランスがいいなと思いますね。結局、人間は他人から学ぶということでしょう。特に、英語はコミュニケーションなので、人対人ですよね。やはり、いい教室を選び、すぐれた先生に教えてもらうべきでしょう。

【三宅】まさにそうですね。いろんなタイプの人間がいるわけで。だから子供にしても、才能と可能性は千差万別だし、ある意味で無限です。英語学習においても、目から覚える子もいれば、耳から覚えるのが得意という子もいます。また、書くと頭に入りやすい子もいるわけです。だから、多様性を見るなかでその子にあった学習方法の提示は非常に重要ですよね。

私どもは英会話学校を運営していますけれども、福原先生はエリートの教育をしています。英語のレベルにおきましても、ネイティブレベルまでなるべき人とそこまで行かなくてもよい人と、仕事の必要の範囲で使えればよい人もいると思うのです。英語教育でも、そういう多様性のある環境になってくると嬉しいですね。本日はありがとうございました。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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