入試本番前に十分に元が取れる
小さな目標であっても、達成すれば達成感が味わえる。人の脳は達成感を覚えるとさらにその快感を求めるようになる性質を持っている。もっと達成したくなる。そうやってやる気に火が着く。目標は小さければ小さいほど達成感を味わう回数が増え、それだけやる気になるチャンスが増える。
短期目標に対する結果が芳しくなかったときには、「なぜか?」を分析し、次回から改善することになる。ビジネス用語でいうところのPDCAサイクル(PLAN=計画、DO=実行、CHECK=評価、ACT=改善)をグルグル回しながら、自分なりの勉強方法を見つけることにつながる。
がんばっていい点数をとる。その小さな成功体験を積み上げていくことで、「がんばればできる」という自己肯定感が育つ。毎週のテストをこなし、いつしか中学入試本番に十分に挑めるだけの学力が身に付いたと自覚できたとき、「千里の道も一歩から」を実感できる。これらも中学受験勉強の中で得られる貴重な財産だ。
中学受験勉強は、入試後に得られる中高6年一貫教育という恵まれた教育環境のために仕方なく行う苦役のように思われがちだが、うまく導いてあげさえすれば、入試本番に至るまでの約3年間で、すでに子供は大きく成長する。それだけでも中学受験勉強をする価値があるというものだ。
志望校合格という長期目標をどういう基準で小さな目標に切り分けるのか、どういう動機付けでそれに取り組ませるのか、達成感はどんな形で味わわせるのか、いかに忘却曲線にあらがうのか。それが拙著『親が後悔しない、子供に失敗させない 中学受験塾の選び方』のメインテーマ「スモールステップ」の概念だ。
スモールステップの設定の仕方に、各塾の「どのようなしくみで子供の学力を伸ばすのか」という思想の違いが表れる。合格実績を確認し、わが子に合った学力帯の塾をいくつか絞り込んだら、さらにそれぞれの塾の「スモールステップ」について比較して選んでほしい。
次回(最終回)は、各塾の「スモールステップ」の違いを確かめる方法を紹介する。