いつの間にかとてつもない距離を子供に走破させる
ゴールまでの距離も方角もわからない小学生に対し、コーチは毎日、「とりあえず今日はあそこの電信柱まで全力疾走してみよう!」などと鼓舞する。小学生は「うん、わかった!」と、夢中になって電信柱を目指す。
近くに見えていた電信柱が意外と遠くにあることもある。途中で転んでしまうこともある。なんだか調子が悪く、うまく走れないときもある。戸惑いながら走る小学生に対して、「今日はうまく走れていたよ!」とか「あれ? 今日はなんだか元気がなかったね」などと声をかけながら、「じゃあ、明日はあそこの橋のたもとを目指そうね」などと、新たな目標を常に与える。
ゴールまでの距離から逆算して、そのときどきの子供の体力ややる気も考慮して、短期目標を設定してあげるのだ。子供はとりあえず、ゴールのことは気にせずに、与えられた目の前の目標に向かって一生懸命走ればいい。
コーチは、それを毎日続けることで、いつの間にかとてつもない距離を子供に走破させ、子供の目にもゴールが見える場所まで導く。最後は子供自らがゴールに向かってラストスパートします。それが中学受験です。
本当にキツイのはラストスパート。自分自身とのギリギリの戦いだ。今まさにラストスパートの胸付き八丁を経験している受験生も多いことだろう。そこだけを切り取ると、中学受験は過酷なレースに見える。
しかし少なくともラストスパートまでの道のりは、ペースを守り、毎日着実に前に進むことが大切。怪我をしないように気をつけながらできるだけ前進させ、同時に、ラストスパートのときに必要になる脚力を鍛えておかなければならない。優秀なコーチは、絶妙なさじ加減で短期目標を与えてくれる。