【ケース】要介護4のAさんが特養(新型ユニット個室)に入居した場合
入所時に支払う費用はゼロのうえ月額利用料は5万~15万円。厚生年金加入者(元公務員や会社員など)の年金受取額の月額平均は約15万円だから、それでほぼまかなえる。
そのために入所希望者が殺到するのだが、なにしろ待機者が52万人もいる。地域によって差はあるが、10年近く待たなければならないところもある。介護を必要とする老人が、何年も待たされるのは酷な話。「入所はあきらめてください」と言われているのと同然だ。加えて厚労省は待機者増加の問題を改善するため15年度から入所条件を原則「要介護3」以上に絞った。
特養のほかにも介護が必要な老人のための公的施設はあるが、利用にはさまざまな条件がつく。介護老人保健施設の入居期間は原則3カ月だし、軽費老人ホーム(ケアハウス)は軽度介護まで。養護老人ホームは65歳以上の経済的困窮者という条件があり、これらも希望通り入所できるとは限らない。
主に首都圏と関西圏を対象に有料老人ホームや介護施設の紹介事業を営むケアプロデュースの安藤滉邦代表は語る。
「消費増税が行われたのは社会保障費に充てるためということでもわかる通り、介護事業の予算は逼迫しています。今後も特養が大幅に増えることは望み薄で、待機者問題が改善されることはないでしょう。特養を当てにすることはできないのです。しかし、最近は民間が運営する有料老人ホームに手頃な価格で入れる施設が増えてきました。介護で困っている方は、少々費用負担が多くなりますが、民間の施設を選択肢に入れることが現実的だと思います」