自宅で看るか、施設ならどこに頼るか。介護パターンの選び方によって、家族のお金と心の負担に大差がつく。実例を通して「わが家のベスト」な選択を考えよう。
別居している親が要介護状態になるという状況はどのようにして生じるのか、いささかイメージしにくいものがある。訪問介護サービスの専門業者、ケアリッツ・アンド・パートナーズの宮本剛宏社長に解説してもらうことにしよう。
「片親が亡くなったとき、たいていは子供の側が同居を申し出るのですが、何十年も住み慣れた家を離れたくないという理由で、親のほうが同居を拒むケースが多いのです。子供のほうは、『もう少しひとりで大丈夫かな』と様子見をするわけですが、ある日、転倒して骨折してしまったりして、介護が必要だねとなるわけです」
裏返して考えれば、別居の自宅介護が成り立つ要件が見えてくる。
「別居の場合は、要介護3が限度です。要介護3とは、手すりにつかまれば伝い歩きでトイレまで行けるレベル。手すりがないと転倒してしまうレベルともいえますね」
家族にすれば、いっそ施設に入ってくれたほうがいいようなものだが、ほとんどの人が施設入居を嫌がるという。
「進んで施設に入りたいという方は少ないですよ。そりゃそうですよね。住み慣れた家がいいに決まっています。介護施設の職員が辞めてしまう理由のひとつが、どんなに一所懸命世話をしても、家に帰りたいと言われることなんです」
なんとか、トイレぐらいはひとりで行ける。住み慣れた家は離れたくない。この2つの要件が揃ったとき、別居の自宅介護という状況が生まれるわけだ。