【ケース1】要介護1で九州-東京間の遠距離介護

75歳になる母親が都内でひとり暮らしをしていた。長男夫婦は九州に転勤中で、次男夫婦は大阪に住んでいるので、次男の妻が月に1度、東京まで出向いて1カ月分の薬のセット(毎日飲む薬を小分けにする作業)などをしていた。母親は要支援2であり、自立して日常生活を送れる状態だった。しかし、掃除や入浴などには支援が必要だったため、週に2回の予防訪問介護サービスを利用して、ひとり暮らしを継続していた。

ところが昨年の夏、あるヘルパーが予防訪問に行ってみると、母親が廊下で倒れていたのである。すぐさま近くの病院に救急搬送したが、熱中症による昏倒という診断であった。母親は数日間の入院を余儀なくされ、退院後は身体機能が全体的に低下していって、軽度の認知症を発症してしまった。担当していたケアマネージャーが要介護度の変更申請手続きを行ったところ、要介護1の認定が出た。

そこでケアマネージャーは、家族と相談して週5回の訪問介護サービスと週2回の通所介護サービスの利用を追加することにしたのである。その結果、月額費用はそれまでの約3000円から、通所介護サービスの昼食代を含めて約2万4000円に増加した。2万円以上のアップだったが、この程度の負担増で十分な見守りをしてもらえるならありがたいことだと、家族も納得している。

このケースが象徴しているように、別居の自宅介護の場合、家族は日々の微妙な変化を知ることができないため、どうしても状況が悪化してから手を打つということになりがちだ。宮本社長が言う。

「特に遠距離の別居の場合は、要支援状態になった段階で、緊急のときにどうするか、金銭的な手当てをどうするかといったことを家族、兄弟間で話し合っておく必要があります。そうした準備をしておかないと、対処がどんどん後手に回って事態を悪化させてしまうことになりがちなのです」