敬遠される業務もプラスの要素で「やりたい仕事」に
さらに、企業が社員の力を最大限引き出そうとするとき、社員の「エンゲージメント」に目を向ける必要があります。エンゲージメントとは、企業や仕事に対する関与の度合いを示します。そのとき重要なのは、仕事に対して社員が感じている情熱というレベルまで深掘りして評価することです。簡単に言えば、エンゲージメントが高い社員は、仕事に対するやる気が非常に高いということになります。
米ギャラップによる調査(2013年)によると、日本でこのエンゲージメントレベルの高い社員は7%、低い社員は69%。アメリカは、高い社員が30%、低い社員が52%。世界平均は13%、63%でした。日本人から見ると受け入れにくい事実かもしれませんが、実は、日本企業の人事慣行に深く関係していると私は考えます。自分が興味を持っていない部署に異動させられると、いやいや仕事をやるので、いい結果が出るはずがありません。
アメリカでは、人がやりたくない仕事でも市場原理が解決してくれます。例えば、勤務先が辺鄙、仕事の内容がつまらなくても、会社側が給料を他の部署よりも上げることで、外部からその仕事をやりたい人が入ってきます。つまり、マイナスに見える仕事も、何かプラスの要素を足すことで、労働者にとって魅力的な仕事へと変えることができ、その仕事に納得したうえで従事する人を生み出せます。
無理矢理やらされるのではなく、企業が付加価値を付けたことで社員が自分からその仕事を選ぶので、エンゲージメントレベルも上がるのです。会社のニーズと人がやりたいことをマッチさせるのが労働市場。会社側がその人に何を担当させるのか決めていたのが今までの日本の会社でしたが、これからは本人がやりたいと思わせる仕事や条件を作り出し、本人が選んだと思えるようにしていくことで、やる気も成果も上げることができるでしょう。