逆に言えば目立たないタイプなら出世できるのか。元人事部長は「バランス感覚が大事だ」と語る。
「銀行の仕事は日々稼いでいるビジネスでなく、ストックビジネスに近い。評価も減点主義であり、業績よりも社内でうまく立ち回れる、バランス感覚に優れたソツのない人が出世している。悪く言えばつかみどころがない“無印商品”みたいな人。職場で目立ちすぎる人は、出世するのは難しい」
「ソツない」「バランス感覚」が銀行の出世のキーワードであるようだ。といっても、人事評価も無視はできない。最近は上司だけでなく、同僚、部下も評価する「360度評価」を導入するメガバンクも多い。メガバンクの人事課長は「日常の成績だけでなく、周囲からも評価されなければ昇進できない。とくに『お山の大将』である支店長は部下の評価を厳しくチェックしている。周囲の評価が悪ければ本店に戻ってくることは許されない」と言う。
実際に銀行マンの出世競争は厳しい。メガバンク出身の大手製造業の人事部長は出世レースについてこう語る。
「銀行での昇進競争は『ホワイトカラーのトライアスロン』とも呼ばれている。入行後に様々な部店を経験し、徐々にふるい落とされていく仕組みだ。しかもゴールは60歳ではなく50歳。50歳で役員になれば本店に残れるし、役員になれなければ外に出される世界。最初の関門は30歳前後。この段階で同期の2~3割が落とされる。次の関門が30代半ば。ここで半分ぐらいが落とされ、第3の関門をクリアできるのは1割程度だ。つまり、40歳ぐらいで勝負が決まることになる」
どんな人たちが落とされていくのか。メガバンク出身の人事部長は「成績が良くない人、もう1つは上司に好かれない人」と即答する。
「どんなに優秀でも、性格的に堅物なタイプは落とされ、柔軟性がある人がどんどん上に上がっていく。また、早い段階で失速するのがプライドの高い人。銀行には東大卒も少なくないが、仕事の能力はそれほどないのにプライドだけが高い人は、当然ながら上司からの評価が低い。東大時代が人生のピークだったような人も結構いる。逆に、上司に好かれて上席役員になる人は、派手さはないが、機を見るに敏な狡知に長けたタイプが多い」
半沢直樹のような上司を手玉に取る派手なタイプはふるい落とされるということか。