政治の世界には数値目標が少ない

【塩田】経営者から政治の世界に入って一番驚いたのはどんな点ですか。

【松田】政治の世界は、数値で目標をつくるのが非常に少ないところだなというのが驚きでした。官僚もそうですが、後で達成できなかった場合を考えている。減点主義の世界で、数値目標はつくらないという発想でみんな動いているのです。

それと、渡辺喜美さんが以前に「好きだ、嫌いだ、コンチクショーで回っているのが政治の世界」と話していましたが、敵か味方かという話ばっかりですね。いろいろな場面を見てきて、くっついていた人たちが突然、敵同士になってケチョンケチョンに言ったりとか、すごいです、本当に。私はそうはなりたくないと思っています。

【塩田】現在の安倍晋三内閣をどう見ていますか。

【松田】安倍政権発足のときからずっと同じことを言っていますが、正直、方向性としてはいいと思っています。ただ、アベノミクスでも成長戦略や規制改革など、やり切れていない部分が多々ありますね。

【塩田】安倍首相のトップリーダーとしてのリーダーシップをどう受け止めていますか。

【松田】私は「集合知」という考え方を持っていますので、私が考えるリーダー像とは違います。でも、それは人それぞれですから。安倍首相はある意味、強権的で、今は党執行部の力をふんだんに活用してみんなを抑えていくやり方ですね。歴史の中で、一定期間は絶対にそういう時期が必要です。安倍流が10年続くのは正直まずいと思いますが、あのやり方もあるだろうなと思います。ただ、私のやり方とは違う。

【塩田】日本を元気にする会は、野党の再編や、自民党政権に対抗する政治勢力の結集という問題についてはどういうスタンスですか。

【松田】2010年に選挙に出ようと決めたとき、一番、必要だと思ったのは「第3極」という存在でした。原発の話でもそうですが、経済団体も労働組合もしがらみがあるわけです。それを打破するには、第3極が必要です。私が言う第3極とは本当の意味の是々非々主義。その点は今もいっさい変わっていません。政権が取れない政党なんて必要ないのでは、と思われるかもしれませんが、今の日本では、しがらみなく、利権団体とは近くならず、ちゃんと国民のほうを向いてやっていく第3極の必要性は絶対にあると思っています。政治は当分の間、参議院が主戦場になります。来年の参院選で野党はもうちょっと頑張るのでは、と思いますが、そうなれば、第3極が本当のキャスティングボートになれると思います。

松田公太(まつだ・こうた)
参議院議員・日本を元気にする会代表
1968年12月、母の故郷、宮城県塩竃市で生まれる(現在、46歳)。水産会社勤務の父親の転勤で5歳のときにアフリカのセネガルに渡り、10歳で帰国。翌年から高校まで、アメリカのマサチューセッツ州レキシントンで過ごし、86年に筑波大学国際関係学類に入学。卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。95年に友人の結婚式でボストンに出かけたとき、スペシャルティコーヒーと出合う。96年に三和銀行退社。97年にタリーズコーヒーと独占契約し、東京・銀座に1号店を開店。98年にタリーズコーヒージャパンを設立して社長に就任。2006年に伊藤園に株式を売却し、07年に社長退任。10年の参院選にみんなの党の公認で東京選挙区から当選。14年にみんなの党の解党で無所属に。その後、参議院の会派「日本を元気にする会」を結成し、15年に新党「日本を元気にする会」を結党して代表兼幹事長に就任。著書は『すべては一杯のコーヒーから』『仕事は5年でやめなさい。』など。
(尾崎三朗=撮影)
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