具体的にはボードに大きな模造紙を貼り、一人ひとりの仕事は付箋紙などを活用して「見える化」することです。

ボードの内容はメンバーのスケジュール一覧やプロジェクトごとの大日程~小日程、課題の整理、仕事の進め方のチャートやアウトプットのイメージなど多岐にわたりますが、ボードを見れば現在進めている業務の全体像が把握できます。さらに写真やイラストなどのビジュアル情報を多用し、突発業務を書き出すことや、状況の変化も付箋紙の移動や貼り替えをすればリアルタイムの動きが瞬間的、直感的に理解でき、仕事の状況感が組織として共有されます。

そして一番重要なのは、このボードを関係者全員が頭を寄せ合い、知恵をしぼって作成すること。その過程で個々のアイデアやノウハウが全員に共有され、互いのスキルや組織力も強まる。新人や派遣社員にとって、これほど有効なOJTはありません。

この業務の「見える化」によって、最終的な目標のイメージ、現在の進捗状況は誰の目にも明らかになり、個人の負荷量やチーム全体の負荷バランスも把握できるので、1人で仕事を抱え込むこともなくなります。

マネジャーもボードを見れば誰が何をしているのか一目で把握できるので、わざわざ担当者に進捗状況を聞く手間も省け、ミーティングの効率化も図れます。また、自分の考える仕事の進め方が妥当かどうかを常に検証もできるのです。

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日程計画ごとに作業の質と量の見える化を図る

電子デバイスが進化した現在に、アナログな方法だと思われるかもしれませんが、複数で意見交換するツールとしてはアナログに軍配が上がります。メールによる情報伝達は文章だけなので重要なポイントがわかりにくく、作成者の文章作成能力によっても差が出ます。そもそもメールで上手く説明できない人は口頭での説明もわかりにくいもの。フェース・トゥ・フェースで行う「見える化ボード」の作成を通じて仕事の進め方の基本ロジックが身につくというメリットもあります。

倉益幸弘
1956年生まれ。東京農工大学工学部卒業。設備機械メーカー、コンサルティング会社を経て、2001年、故・岡田幹雄氏とインパクト・コンサルティングを設立。実体験を活かしたプログラム「インパクト・メソッド」はトヨタ自動車、デンソー、キヤノンなど200社以上のメーカーの技術部門を中心に採用されている。
(永浜敬子=構成)
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