詐欺犯は「カモ」を掛け算型で騙し取る

ある高齢女性が引っかかったマイナンバー関連の犯罪はこうだ。

「公的な相談窓口担当者」からかかってきた電話。その声の主は、その高齢女子に口頭でマイナンバーを伝えた。もちろん、担当者は「公的」な人物ではなく、12ケタの番号も嘘っぱちだ。その後、女性は別の人物から「公的機関に寄付をしたい。そこで突然ですが、あなたのマイナンバーを貸してもらえないですか」と協力をしてほしいと言われた。「寄付ならば」という気持ちになったのだろうか、女性はマイナンバーを教えると、翌日、寄付を受けた機関を名乗る人物から、「マイナンバーを教えたのは犯罪にあたります」とお金を要求され、数百万円を払ったという。

これもまた、「あなたは犯罪行為をした」といって脅す、特殊詐欺の典型的手口にマイナンバーを絡ませたものである。

いずれのケースもすでに行われている手口に、マイナンバーという時事問題をプラスして行われている。いわゆる「足し算」型の詐欺である。

「引き算」型を使う手口では、値引きという手段を使う。わざと高額な値段を設定しておき、それから一気に何十万円以上を値引いて、安くしたという印象を与えて、契約へと誘う。

「割り算」型では、高額な金額を月々払いにすることで相手の了解を取りやすくしたり、口説き落とす手口のストーリー展開もいくつかに分割して話を進めたりする。よく振り込め詐欺では、何人も人物を登場させる劇場型の手法が使われるが、1人の人物が騙しの話をするのではなく、息子役、上司役、弁護士役、金を受け取る部下役と、話を分割しながら、じわじわと相手を追い詰めていく。

「掛け算」型は、どうか。近年の詐欺では、本人が騙されたと気が付くまで、繰り返し金を払わせる傾向がある。前出のマイナンバー絡みの架空請求詐欺でもそうだったが、20代の被害男性は、最初5000円分のギフト券を購入させられた。その後も「手数料」などの名目で、繰り返し電子マネーを要求され、それが10回ほどにわたってしまった結果、約50万円分の金額にまで膨れ上がったのだ。詐欺を繰り返すことで、騙しとる金を2倍、3倍にしていくのだ。