インテルから学ぶべき本当に大切な教訓
こうしたインテルの歴代トップに共通する使命感が「ムーアの法則を守り抜く」ということだった。実際、71年に開発されたマイクロプロセッサ「4004」には2300個のトランジスタが搭載されていたが、82年の「インテル286」には13万個、95年の「ペンティアム・プロ」には550万個が搭載された。ちなみに2015年に発売された第5世代「Core」となると13億個ものトランジスタが集積されているという。
もちろん、インテル経営陣とて何度かのミスは犯している。ライバルメーカーへのライセンス生産を認めたことでシェアを奪われたこともある。戦略商品である「ペンティアム」のバグへの対応が遅れ、巨額の損失を発生させるといった苦い経験もした。それでもインテルの経営陣は、その卓越した学習能力で、そうした失敗を次の飛躍の糧にしてきた。そのことをマローンは「アンディ・グローブ時代のインテルから学ぶべき本当に大切な教訓は『自らの過ちから学ぶ者だけが成功する』である」と記した。
そんな同社のマイクロプロセッサ事業がいま、ポータブルコンピュータ市場では苦戦を余儀なくされている。社員がアイフォンを重宝に使っているにもかかわらず、インテルはモバイルを傍流ととらえ、パソコン産業に軸足を置き続けた。しかし、いまやユーザーのニーズはスマートフォンやタブレットに向いており、稼ぎ頭のパソコンマーケットは縮小傾向が続く。この状況をインテルはどう打開していくのか……、起死回生の打ち手が求められる。