「野球部スタート」のレジェンド
キンちゃんは、福島・清陵情報高校では野球部に所属していた。楕円(だえん)球に親しむようになったのは、日大工学部の弱小ラグビー部に入ってからだった。ひょんなことから東芝に入社することになり、厳しい練習に耐え抜いて、2004年に代表入りした。
07年のW杯英仏大会、11年W杯ニュージーランド大会に出場した。東日本大震災で被害を受けた福島県郡山市出身。前回大会では、被災者に勝利を届けて勇気づけたかったのに1勝もできなかった。キンちゃんは最後のカナダ戦の夜、ニュージーランドはネイピアのパブでビールをあおっていた。
でも今回、南アを倒し、サモアにも快勝した。37歳150日での出場は、村田亙さん(現専大監督)が持つ日本代表の最年長出場記録を5日更新するものだった。
ふだんは温厚でも、キンちゃんは試合になると阿修羅のごとく暴れ回る。肉離れしても、足を懸命に動かした。足をひきずりながら、タックルした。倒れても、倒れても、立ち上がって相手に向かっていった。
けがのため、最後の米国戦には出場できなかった。でも積み上げたキャップ(国代表戦出場)数は日本人FW最多の「96」となった。もうレジェンドである。