加えて、見直したいのが食費である。子供たちが家を出て量は減ったのに、食費は以前と変わらないというケースは往々にしてある。たとえば輸入牛を黒毛和牛にするなどプチ贅沢をしているためだ。繰り返しになるが、この時期は老後の幸福を決める大事な貯め時。財布のひもはしっかり締めておかないと、後々後悔することになる。

貯めたお金は老後の資金にするほか、住宅ローンを抱えているのなら返済に充当する。改めて言うまでもなく、住宅ローンは定年までに完済するのが理想だ。

ただし、ローンが終わったからといって安心というわけではない。長く住めば、建物は老朽化する。一戸建てなら屋根の葺き替え、外壁の塗り直しなどメンテナンス費用に100万円単位のお金が平気で飛ぶ。マンションであっても、毎月支払う修繕積立金はもっぱら共用部の修繕に使われ、住戸内の配管や水回りの設備の取り換え、クロスの張り替えなどは自己負担。それに備えておかないと、家はあっても住むに住めないという結末になる。

さらに、親の介護がふりかかってくるケースが多いのもこの年代だ。介護費用は親負担になるケースが多いが、多くは専業主婦の妻が労働力となることで、肉体的にも精神的にも疲れて、外食や買い物にはしってしまうこともある。また、同居して家を介護しやすいようにリフォームする可能性もあるだろう。

そうしたメンテナンス費も含め、老後のお金を実感してもらうためにライフプランシートの作成を勧めている。予想される出費をすべて書き出すと、考えている以上にお金がかかることがわかるはずだ。

自分へのご褒美は、ライフプランを立てたうえでの話。よく肝に銘じてほしい。

▼節約のポイント

[1]人生最後の“貯め時”だと自覚する
[2]子供が独立したので保険を見直す
[3]食費のプチ贅沢をストップ

藤川太(ふじかわ・ふとし)
家計の見直し相談センター代表。ファイナンシャルプランナー、CFP認定者。宅地建物取引主任者。1968年、山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、大手自動車メーカー勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。累計2万世帯超の相談実績を誇る。著書に『やっぱりサラリーマンは2度破産する』『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』など多数。
(上島寿子=構成 小原孝博=撮影)
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