「私でも月数千円で入れたわ……」と言って高齢者が微笑むCMでおなじみの保険。人気商品は果たして本当に老後を助けてくれるのだろうか?
「入れます、でももらえません」
保険に入る前には健康状態や職業などを告知したり、医師の診察を受けたりして加入できるかの選別がなされる。病歴があると一般の生命保険や医療保険にはなかなか加入できないし、通院歴や現在の健康状態などをごまかしたりすると「告知義務違反」となり、加入できても肝心の保険金や給付金が払ってもらえなくなる。しかし、高齢になれば誰でも1つや2つは持病を抱えているものだ。こうしたシニア層をターゲットにしたのが「病気でも入れる」がキャッチフレーズの保険である。
この手の保険には「無選択型」「引受基準緩和型」などがある。無選択型は、告知なしで健康状態が悪くても誰でも加入できるが、支払い要件が非常に厳しい。加入前にかかっていた病気、それに関連する病気で入院や手術をしても保険金や給付金は受け取れず、「入れます。でも、もらえません」となることが多い。
一方、引受基準緩和型は、契約前の告知はあるが一般的な保険に比べると告知内容が緩やかだ。誰でも入れるわけではないが、病歴があっても加入できることもある。また、持病で入院や手術をしても、一定期間を経過すれば保障を受けられる。たとえば「最近3カ月以内に医師から入院・手術を勧められた」「過去2年以内に入院・手術を受けたことがある」「過去5年以内にがん・肝硬変で入院・手術を受けたことがある」のいずれにも当てはまらなければ加入できるといった具合だ。現在、テレビコマーシャルなどでよく見かけるのは、この引受基準緩和型だ。死亡時に保険金を受け取れる「終身保険」と入院や手術をしたときに給付金を受け取れる「医療保険」の両方のタイプがある。
たとえば医療保険は高血圧や糖尿病などの持病があっても加入でき、その病気で入院・手術をしても給付金は受け取れるので、シニア世代には魅力的な商品ではある。だが1日あたり1万円の入院給付金がもらえるタイプに加入しても、契約1年目は半額の5000円しかもらえないなどの制約もある。また、一般的な医療保険に比べると、保険料は非常に高い。たとえば、ある会社の引受基準緩和型の医療保険に60歳男性が加入した場合の月払保険料は、同条件の一般的な医療保険の2倍以上になっている(図参照)。