月々3000円は本当に割安か?
なぜ、引受基準緩和型の保険料はこのように割高なのだろうか。生命保険の保険料計算の専門家であるアクチュアリーの坂本嘉輝氏(アカラックス代表)は「そもそも引受基準緩和型の保険をつくれるデータがない。その中で、保険料計算をしているので、割高な保険料を設定せざるをえない」という。
そもそも保険という商品は「収支相等の原則」で成り立っている。つまり、契約者から集めた保険料と、加入者が病気やケガ、死亡をしたときに支払う保険金(給付金)がバランスをとるように設計されているのだ。「たくさん保険料を取りすぎても金融庁が認可しないし、少なすぎれば保険会社の経営が成り立たない。必要な給付を行っても保険会社が絶対に損しないように保険料は決められています」(坂本氏)。
このときに用いるのが各種の事故率だ。一般的な医療保険の保険料は、死亡率、入院する率、手術を受ける確率、平均入院日数など過去のデータを分析して決められる。そのもとになっているのが国の人口動態統計、厚生労働省の各種統計などだ。
だが、これらのデータからわかるのは、日本人全体がどれくらいの確率で入院するか、手術を受けるかといったことで、病気の人や健康状態の悪い人ばかりを集めた公的なデータはない。そのため、引受基準緩和型の保険料は、ある意味では「勘と度胸」に頼る部分も大きい。「国民全体の一般的なデータと、各社が保有している標準下体保険のデータを混ぜこぜにして、無理やりに保険料を決めている感もある」(坂本氏)という。
前述のように、一般的な医療保険に加入できる人は事前に健康な人だけを選別している。だが、健康状態の悪い人でも割り増し保険料や特定の身体の部位は保障しないなどの条件をつければ、生命保険や医療保険に加入できることもある。通常の条件では加入できない健康状態の悪い人などのことを「標準下体」というが、こうした人のデータを生保各社は蓄積している。
引受基準緩和型にはこのデータが用いられているが、「標準下体保険のデータはあくまでも参考程度。引受基準緩和型は告知が緩やかで、標準下体保険に加入する人よりも、さらに健康状態の悪い人がどんどん加入してきます。一定の免責事項はあるものの、給付金の支払いが増える可能性もあるので、保険会社の経営を圧迫させないために割高な保険料を設定しているわけです」(坂本氏)。
中には、月々の保険料が3000円など割安に見えるタイプもあるが、目先の保険料を安く見せるために、もらえる給付金のほうを少なくしているだけだ。基本的な仕組みは変わらず、もらえる給付金や保険金に比べて保険料が割高なのは変わらない。保険会社にとっては、これまで加入を断っていた人からも保険料をもらえるので、引受基準緩和型は「おいしい商品」なのだ。