新商品投入は酒税見直しを先取りか

サントリーは創業者、鳥井信治郎による「やってみなはれ」精神を受け継ぎ、1963年にビール事業に本格参入し、45年目の2008年に悲願の黒字化を達成した。同年にはサッポロをおさえてシェア3位に浮上し、その後は勢いに乗っている。

ザ・モルツ投入に当たっては、「スタンダード・ビール市場に挑戦する」(サントリービールの山田真二常務)と、年内に旧モルツの1.4倍の200万ケース(1ケース=大瓶20本換算)、20年に1000万ケースの目標を掲げ、悲願のシェア20%獲りへの弾みを付けたい意向だ。その本気度は、挑戦的なCMによるセンセーショナルなデビューでも伝わってくる。

同時に、この時期に、主戦場のスタンダード・ビール市場に新商品で攻勢をかけるサントリーの思惑も垣間見られる。政府・与党は年末にかけた来年度税制改正に向け、今後、ビール類の酒税見直しの議論を本格化する。議論の方向としては、昨年、消費税率再引き上げとからんで棚上げされた、「ビール」「発泡酒」「第3のビール」によって異なる税率の一本化が焦点となり、税率の高いビールの税率引き下げが議論される見通しだ。

ザ・モルツの投入はこれを先取りし、ビール回帰への流れを呼び込もうというサントリーの戦略とも受け取れる。半面、縮む一方のビール市場はゼロサム・ゲームの様相が濃く、ハイボールのブームを作り上げるなどマーケティング力で定評のあるサントリーの攻勢は、スタンダード・ビール市場に波風を立てるだけで、大手4社による肉弾消耗戦を助長するだけとの見方もある。

売られた喧嘩は買うよりないのがビール業界の常であり、サントリーの宣戦布告によって、ビール業界の「仁義なき戦い」は再び火蓋を切って落とされた。

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