不特定多数の顧客を相手にするとき、企業がとるべき戦略とは何か──。筆者は、ブランドを場とした「プロセス・マネジメント」が、そのカギを握ると説く。
「リセット型マネジメント」の非効率性
普通言われるところのマーケティング・マネジメントとは、マーケティング諸活動を統整する計画を立てることである。たとえば、マーケターが新商品の市場導入を図るとき、市場を細分した層に分け(セグメンテーション)、その中からターゲットを定め(ターゲッティング)、そして競合商品との差別化を図る(ポジショニング)という形で計画を立てる。それがいわゆるSTPと呼ばれるやり方だが、それを指針としてマーケティングの4つのP(製品/価格/販売促進/チャネル)の具体策が決まる。
だが、4つのPがいくらきめ細かく決められても、そこには状況変化への対応策は含まれない。計画を策定したものの意に反して拙い結果を生み出した場合には、あらためて計画をつくり直すしかない。このやり方は、PDC(プラン/ドゥ/チェック)のやり方に則ったものであるが、問題はそこにある。
「計画が思い通りいかなかったからといって、計画を1回1回見直し、やり直してよいものか」という点が問題なのだ。成長市場で、「少々の利益を犠牲にしても成長を狙え」と言われている事業であれば、少々コストがかかっても1回1回やり直すやり方も許される。だが、市場での成長余地も生産におけるコスト削減余地も技術面での余地も小さくなった状況で、「失敗したら1から考え直してというやり方(=リセット型)」はお勧めではない。いかにも非効率だ。日本メーカーの多くが成熟期に入った段階から収益性を落としているのは、1つにはこうしたマーケティングが行われているからだと、筆者は考えている。
成熟期に入った段階にあっては、マーケティング計画の全面改定ではなく、マーケティングの中の問題点をきちんと見定めて、そこにピンポイントで絞って改良し、再度市場に挑むというやり方が必要になる。そこに、プロセス・マネジメント(市場という相互行為の場で、時間経過に対応したマネジメントを行う)の存在意義がある。通常のマーケティング・マネジメントとの違いを端的に言えば、「時間経過のマネジメント」があるか否かである。
こうした問題意識の下、前回は「顔の見える顧客」を営業の問題として扱ったが、今回は相手の顔が見えない市場でのマネジメントを論じよう。