「過去の経験をもとに考える」のは×
「未来から現在を逆算する」のが○
【鈴木】顧客は常に新しいものを求める。これはわかりきったことのようにも思えます。でもわれわれは、いったん売り手の側に回ると、顧客の心理を忘れて、過去の経験をもとに同じことを繰り返してしまう。それは、同じことをしたほうが楽だからです。結果、顧客に飽きられる。どの局を見ても同じような番組が流れるテレビ業界などはその典型でしょう。
新しいものを生み出すには、過去の経験から離れ、未来から現在を考えることです。例えば、セブン-イレブンではセブンミールという食事の宅配サービスを2000年からいち早く始めました。少子高齢化が進めば、夫婦2人や単身世帯の高齢者が明らかに増えていきます。そのとき、おいしい食事が宅配されれば必ず利用してもらえる。未来から現在を考えて事業を発案しました。
最近はオムニチャネルといって、ネットとリアル、あらゆる接点を連携させて顧客にアプローチする手法が注目されています。ネット通販が伸び始めた頃、リアル店舗の売上高が減ると誰もが考えましたが、私は逆にネットと連携すればリアル店舗への来店を増やすことができると予想し、「ネットを制するものがリアルも制する」と唱え、ネットとリアルを融合する施策を早くから進めました。
金の食パンも、「もっとおいしい食パンをつくろう」と、一歩先の未来から発想した商品です。みんながやるのを見てから始めるのでは遅すぎる。未来から現在を思い描くことで、顧客は次はどんな新しいものを求めるか、潜在的ニーズを察知し、いち早く応えていくことができるのです。